2018年4月、KDDIの代表取締役社長に就任した高橋誠氏。次世代通信規格「5G」時代に照準を当てて、スタートアップ企業にも積極的に出資、新たなビジネスモデル構築に尽力する。日本を代表する電気通信会社として業界をリードし、新しい時代のライフデザイン企業を目指す。そんな高橋氏に経営トップとしてどのように企業を変革していくのかを聞いた。
(取材=麓幸子:日経BP社 日経BP総研フェロー、文=船木麻里)

若手との直接対話が大きな気づきに

――社長は「ワクワクを提案し続ける会社」というスローガンを発表し、通信とライフデザインの融合を重要視されていますね。社長就任の発表会でも「ワクワク」という言葉が随所に登場していました。

高橋:「ワクワクを提案し続ける会社」というのはいろいろな意味があって、もともと当社は技術系の会社ですので、どうしても「5G」「ビッグデータ」「IoT」などと技術用語で語る人がすごく多いんですよ。私はそういうことに抵抗があるので、「テクノロジーを使って、何ができるのかを考えよう」と、「新しい技術によってワクワクを提案し続ける会社」と言い始めたんです。目指す姿としては「お客様に一番身近に感じてもらえる会社」もあります。

 するといろんなことにつながることに気づきました。なでしこ銘柄に6年連続選定されている当社をダイバーシティ企業と評価していただいていますが、このことについても、ダイバーシティをしっかり理解している会社だからこそ、ワクワクを提案できるんじゃないかと思ったんですね。

1961年滋賀県生まれ。84年横浜国立大学卒業。84年京セラ入社。同年第二電電入社。2003年KDDI執行役員ソリューション事業本部コンテンツ本部長兼コンテンツ企画部長。10年代表取締役執行役専務。16年代表取締役執行役員副社長。18年代表取締役社長。

――ダイバーシティとワクワクという言葉が結びついたのですね。

高橋:最近「全国支社巡り」をやっていましてね。支社に行って部門長、GL(グループリーダー)クラスの、若い人たちと1時間ずつ話して、1時間飲んで帰る(笑)。これがなかなか面白いんですよ。

 若い人と「当社の利益を使って世の中にどういう貢献をしたらワクワクを提案できるでしょう」「自分の仕事をワクワク感じるためにはどうしたらいいでしょう」をテーマに議論すると、いろいろな職場の人たちが「ワクワクするにも、現実とのギャップがある」という。「社長はワクワクと言うけど、実際にはさあ…」っていうね。

――理想と現実にはギャップが付き物ですね。それをどうやってなくそうと思いますか。

高橋:みんな「ワクワクして仕事したい」とは思う、でも実際に与えられている仕事とはギャップがある。前向きな社員はそれをどうやって埋めようかと、一生懸命考えています。特に若手の社員は、このギャップを埋めるのに「時間的な経過を頭の中に置ける」のですね。

 最近は社員の副業を認めるかどうかという議論がありますが、私たち「おじさん世代」からみると「本業をしっかりやってりゃいいじゃないか、副業なんかしないで…」という思いがあると思うんです。でも、若い人は「今はこの仕事をやっています。まだワクワクしないんだけど、副業を使ってこういうスキルを磨いておきたいです。それが将来的にはこんなスキルにつながって、ワクワクした仕事ができるかもしれない」と考える。なるほどなあと思いますね。

 ワクワクと自分がやっていることのギャップを、単純に「手法」で埋めるのではなく、もう少し「時間軸」も利用しながら埋めていくことが、これからの時代に求められるのではないかと思います。

 私は社内でも「自律と責任」ということをよく言いますが、働き方変革にしても、このように「空いた時間をどう使うか」と前向きに考えている人たちが増えてくると、これからの新しい時代の働き方につながっていくのではないかと思います。