――働き方改革といいますと、どうしても労働時間削減といった「働かないこと」に注力しがちなんですが、そうではないと。

高橋:欧米スタイルのように、個人が自律と責任の意識を持って自分の働き方を組み立てていくということが重要なのだと思います。一方で働く時間の制約ある人が確実に今後増えていきます。その中で、いかに個人のスキルを上げていくか、これを並行してやらないと、結果的に会社の持続的成長につながっていきません。

 働き方変革が進めば、夜の時間は少し空くでしょう。その余裕を使って、自分のスキルを磨いて、それが将来的に会社に貢献しようと思うこと、また会社がそれに対して支援することが働き方変革の重要な要素になってくるんじゃないでしょうか。

――ワークとライフを分けるのではなくて、インテグレーションというか一体となって作り上げていくということでしょうか。

高橋:そうですね。働いている時間が一番楽しかったら、それはとてもハッピーですよね。でもそれを言い過ぎると、日本では「オンとオフの切り替えがうまくない」なんて言われてしまう。「オンはつまらなくてオフが楽しい」そんな概念が日本にはあるように思います。

 そもそも日本人はオン、オフを言い過ぎです。欧米人はあんまり言わないですよ。例えばシリコンバレーの連中は土曜日にチームビルディングのために、集まってバーベキューをする。日本人は「これはオンかな、オフかな」って思うみたいだけど、そんなことではなくて「チームビルディング」なんですね。

 オンが楽しければ、それに越したことはないし、オフの時間も楽しければなおいいです。そしてオフの一部分は自分のスキルアップに使ってもいい。そういうことだと思います。

ワクワクと現実のギャップをどう埋めるか、一緒に考えたい

――さきほど社長のコメントにもありましたように、KDDIは「なでしこ銘柄」を6年連続で獲得している、2社のうちの1社ですね。社長の女性活躍への思いを今一度お聞かせください。

高橋:なでしこ銘柄に選定されるのは、結構ハードルが高いんですが、これからも途切れないようにしたいですね。でも「7年連続を目指して」と、意識しなくてもできるのが理想です。実際部長クラスの女性はかなり増えてきました。今、彼女たちはどの部署でもキーパーソンとして働いてくれています。頼もしいですね。私もそんな女性を全力で応援したいと思っています。

支社キャラバンでは若手と直接対話する。そこで気づきも多いと髙橋社長。

――ただ「女性は管理職になりたがらない」傾向にあると言われます。それはどう感じますか?

高橋:最近は男性もそうですよ。「上の人を見ていると大変そうだから」って。私の世代から見ると「え、課長に上がれるのに、上がらないの?」と驚いちゃいますけど。

 ただ、全員が実際の働き方に不満を持っているわけでなく、もっと働きたい人もたくさんいるし、そうでない人もいる。ダイバーシティという言葉のとおり、一律にものを考えないことが大事、私たち世代の既成概念にとらわれないことも大事です。

――最後に働く女性へのメッセージをお願いします。

高橋:私は男性、女性と分けて考える感覚がないので、女性へのメッセージというより、若い世代へということでいえば、日本は今後人口も増えないし、将来的に不安を抱えている人は多いと思うけど、自分はその中でどういう価値を提供できるのかを常に考えながら社会に貢献してほしいと思います。私の世代のように、会社の中でまっすぐ上がっていくのではなくて、いろいろな経験しながら人生を送れるような働き方が理想なんじゃないかなと。

 ダイバーシティに関しても対女性というだけでなく、もっと幅広くケアする必要があると思います。そして繰り返しになりますが、自分のワクワクと現実とのギャップをどうやって埋めるか、一緒に考えられるような会社になればいいですね。

麓 幸子(ふもと・さちこ) 日経BP社 日経BP総研フェロー
麓 幸子

1984年筑波大学卒業。同年日経BP社入社。88年日経ウーマンの創刊メンバーとなる。2006年日経ウーマン編集長。12年ビズライフ局長。日経ウーマン、日経ヘルスなど3媒体の発行人となる。14年日経BPヒット総合研究所長・執行役員。15年日経BP総合研究所副所長。17年日経BP総研マーケティング戦略研究所長。18年現職。2014年法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。内閣府、林野庁、経団連・21世紀政策研究所研究委員などを歴任。筑波大学非常勤講師。一男一女の母。著書等に『女性活躍の教科書』『なぜ、あの会社は女性管理職が順調に増えているのか』(日経BP社)、『企業力を高める―女性の活躍推進と働き方改革』(共著、経団連出版)、『就活生の親が今、知っておくべきこと』(日本経済新聞出版社)などがある。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。