昨今、企業が最も頭を悩ませているのが人材戦略といえるだろう。優秀な人材は常に不足しているうえに、やっと採用しても離職者が後を絶たない。日々薄れていくかのように見える社内の一体感。社員のモチベーションを上げ、社内を活性化するにはどうしたらよいのか。

 ダイバーシティの掛け声のもと女性やシニア、外国人の活用は喫緊の課題であり、一方で「働き方改革」を理由に労働時間の短縮を迫られる。人材戦略は、人事担当者はもちろん、経営者にとっても真剣に向きあうべきテーマである。

 こうした人材に関する取り組みを、周年事業として推進する企業が増えている。この連載では、周年のタイミングに新たな人材活用に取り組んだ企業の実例を見ていく。第2回は、従業員の顔を「見える化」した周年記念企画で社内活性化に成功した、大丸松坂屋百貨店の事例を紹介する。
(取材・文=大塚 葉:日経BP社 日経BP総研 上席研究員/HR人材開発センター長)

 2017年に大丸の屋号が創業300周年を迎えた、大丸松坂屋百貨店。同社では、1年以上かけて様々な300周年記念企画を行った。その中でも、特に社内コミュニケーションの活性化に役立ったといえるのが「輝く100人のポスター」制作である。店頭で働く従業員をはじめ、裏方スタッフにもスポットを当てたプロジェクトだ。

働く従業員の素顔を「見える化」

 このプロジェクトは、同社が大丸創業300周年を機に実施した多くの記念企画のうちの一つ。これまでも同社は周年のたびに様々な企画を行ってきたが、周年の数字になぞらえた価格の限定商品発売など販促PRの展開が主だった。しかし今回は「瞬間風速的に終わってしまうイベントではなく、300周年にふさわしい特別記念企画を計画しました」と、J.フロントリテイリング取締役兼執行役常務経営戦略統括部長兼リスク管理担当兼大丸松坂屋百貨店取締役の澤田太郎氏は語る。

 「輝く100人のポスター」プロジェクトは、全国の15店舗で勤務する従業員や取引先スタッフの中から個性豊かな100人を選び、彼ら・彼女らを主役としたポスターを作成するというものだ。各地域のクリエーターが、従業員一人ひとりの個性や特徴を引き出す写真を撮影してデザインし、キャッチコピーを加えた。「店頭で働く従業員はもちろん、普段は表に出ない裏方のスタッフについても知ってもらおう、という企画です」と澤田氏は語る。

 例えば大丸神戸店で総務・保安・防災を担当する大丸神戸店 業務推進部 柊 和秀氏は、店内で長い行列になったお客様を上手にご案内するという特技の持ち主。そこで柊氏のからだに小さな人形をたくさん取り付けて撮影し、「人呼んで、混雑隊長」というキャッチコピーを付けたポスターを制作した(下の写真)。

 また、通常お客様と接することはない施設メンテナンスの担当者は、マッチョな姿の写真に「THE URAKATA(ザ・裏方)」というキャッチコピーとともにポスターに登場。このほか美術品を仕入れるバイヤー、警備員、本社の法務部担当者など、様々な部署から選出された個性豊かなスタッフによる百人百様のポスターが完成した。