昨今、企業が最も頭を悩ませているのが人材戦略といえるだろう。優秀な人材は常に不足しているうえに、やっと採用しても離職者が後を絶たない。社員のモチベーションを上げ、社内を活性化するにはどうしたらよいのか。

 ダイバーシティの掛け声のもと女性やシニア、外国人の活用は喫緊の課題であり、一方で「働き方改革」を理由に労働時間の短縮を迫られる。人材戦略は、人事担当者はもちろん、経営者にとっても真剣に向きあうべきテーマである。

 こうした人材に関する取り組みを、周年事業として推進する企業が増えている。この連載では、周年のタイミングに人材との関わり方を検討した企業の実例を見ていく。第3回は、「人づくり」を100周年事業の柱の一つとして取り組んだパナソニックの事例を紹介する。
(取材・文=大塚 葉:日経BP社 日経BP総研 HR人材開発センター長)

 パナソニックが創業100周年を迎えたのが、2018年。同社は100周年プロジェクトとして、「新しい事業への布石」「人づくり」「資産の継承」という大きな3つのテーマに取り組んだ。

「物をつくる前に人をつくる」という精神

 3つの中でも、特に際立っていたのが「人づくり」の取り組みだ。同社では100周年という節目の年に、イベントの開催だけに終わったり、マーケティングの機会にするだけでなく、社内に変革をもたらすための継続性のある施策を行いたいと考えた。「物をつくる前に人をつくる」とは、創業者 松下幸之助の言葉。パナソニックにとって「人づくり」は、創業当時からの重要な経営課題だったのだ。こうして社内外の環境や人員構成の変化に合わせ、「次の100年に向けた人づくり」に重点を置いた施策や社内風土・仕組みづくりがスタートした。

 「人づくり」に必要なのは、時代の変化をとらえ、一人ひとりの働きがいを考える活動である。パナソニックでは、社員の自己成長を積極的に後押しし企業風土を変えるために、この活動を「働き方改革」ではなく「働きがい改革」として取り組みをスタートした。

 2017年11月にはパナソニックらしい「A Better Workstyle」の実現に向け、「人と職場が活きる施策」を提供し、事業場や職場における活動を支援するとともに、働きがい向上に向けた取り組みや活動事例を集め、発信する専任組織「A Better Workstyle編集局」を発足させた。これに合わせてシンボリックなイラスト(下図)も制作し、様々な施策を推進してきた。

「A Better Workstyle」を表すイラスト(パナソニック提供)

 木のイラストにデザインされたのは、1枚ずつ色が違う100枚の葉。一人ひとりに異なる働きがいを見つけてもらうと同時に、同社はそのためのよりよい働き方を提供し、社員の成長が会社の発展につながるという姿勢を示している。