周年を迎えるにあたり、インナーブランディングに注力する企業が増えている。企業の理念やビジョンを社員に浸透させるだけでなく、周年事業を通じて社内コミュニケーションを活性化したり、社員のエンゲージメントの向上や一体感の醸成を図ったりするケースも多い。この連載では、周年のタイミングに人材との関わり方を検討した企業の実例を見ていく。今回は、創業70周年を機に社員参加型の周年事業に取り組んだフォスター電機の事例を紹介する。
(取材・文=大塚 葉:日経BP総研 HR人材開発センター長)

 東京・昭島市に本社がある音響機器メーカー、フォスター電機が創業70周年を迎えたのが2019年。記念プロジェクトとして行った事業の一つが、70周年記念誌「FOSTER 70th ANNIVERSARY BOOK」の制作だ。周年事業プロジェクトをスタートした2017年、同社代表取締役社長の吉澤博三氏にはある思いがあった。

 フォスター電機では50周年の際、年史を制作し発行している。戦後まもなく創業した同社の歩みをまとめた50年史について、吉澤氏は「当社の歴史を振り返り自分の頭を整理するのに必要な一冊であり、時々読み返しています」と語る。そのうえで決意したのが、「70周年記念誌は、50周年の時と全く違った観点で制作する」ということだった。

フォスター電機 代表取締役社長 吉澤博三氏(撮影:山田慎二)

 70周年を迎えるにあたり、吉澤氏がキーワードにしたのが「100年企業」だ。「フォスター電機がこれからの30年間を生き残っていくために、DNAとして何を残していくべきか。70周年は『古希』でもあり大事な節目。100年に向かう重要な通過点として、当社の未来を考えるきっかけにしようと思いました」(吉澤氏)

 もう一つ目指したのが、「社員を巻き込んだ周年事業」である。「当社の未来を考えた時、30年後に会社を支えるのは私たちの世代ではなく若手社員たちです。これから先、社会がどのように変わっていき、当社がどのような事業・サービスに注力していくべきかを彼ら自身に考えてほしいと思いました」と吉澤氏は語る。