昨今、企業が最も頭を悩ませているのが人材戦略といえるだろう。優秀な人材は常に不足しているし、やっと採用しても離職者が後を絶たない。日々薄れていくかのように見える社内の一体感。社員のモチベーションを上げ、社内を活性化するにはどうしたらよいのか。

 ダイバーシティの掛け声のもと女性やシニア、外国人の活用は喫緊の課題であり、一方で「働き方改革」を理由に労働時間の短縮を迫られる。人材戦略は、人事担当者はもちろん、経営者にとっても真剣に向きあうべきテーマである。

こうした人材に関する取り組みを、周年事業として推進する企業が増えている。この連載では、周年のタイミングに人材との関わり方を検討する企業の実例を見ていく。第1回は、周年を機に「働き方改革」と向き合ったサイボウズの事例を紹介する。
(取材・文=大塚 葉:日経BP社 日経BP総研 上席研究員/HR人材開発センター長)

 企業向けグループウエアを提供するサイボウズ。2017年に創業20周年を迎えた同社が周年事業の一環として取り組んだテーマが、「働き方改革」だった。同社の「働き方」への取り組みは、実は歴史が長い。20周年プロジェクトに関わったビジネスマーケティング本部 コーポレートブランディング部 広報リーダーの杉山浩史氏はこう語る。「当社は2005年に離職率が28%とピークに達した頃から、より良い働き方について真剣に検討してきました」。特に働き方の多様性を重視し、2007年には働く時間や場所を9種類から選べる画期的な「選択型人事制度」をスタートしていた。

「楽しくない働き方改革」に問題提起したい

 20周年を2年後に控えた2015年、サイボウズが改めて「働き方改革」を周年テーマに掲げたのには理由がある。「ここ数年、国や企業が働き方改革を推進しています。しかし『皆いっせいに短時間労働』や『一律に残業禁止』など、画一的で実情に合わないケースもあるのでは、と感じていました。弊社は以前から、働き方の多様性を重視してきました。仕事とプライベートの時間の比率は個人の環境や希望によって異なってよいはずなのに、上から一律に決めてしまうのは不自然なのではないか、と考えたのです」(杉山氏)。世の中の「働き方改革」の違和感に問題提起すべく同社が設定した周年事業のキーワードが、「働き方改革、楽しくないのはなぜだろう。」だった。

 こうして同社が周年施策のひとつとして制作したのが、ビジネスパーソン役のアリとキリギリスを主人公にした3分間のアニメーション、「サイボウズ ワークスタイルアニメ『アリキリ』」である。アニメは全部で4作。例えば「第1話:残業編」では、職場で出される残業禁止令が現場の実情に合わないという話題が登場し、「第2話:女性活躍編」では複数の企業から社外取締役を依頼される女性のエピソードとともに「形だけの女性活躍施策」を風刺している。このほか「第3話:イクメン編」「第4話:複(副)業編」でも、「あるある」と思わずうなずくようなコンテンツが満載だ。

 昨今のいわゆる「働き方改革ブーム」を少し皮肉りながら、くすりと笑える「ゆるアニメ」に託したのは、「働き方の多様性を、いま一度考えてみよう」という同社のメッセージである。アニメ制作にあたっては、20~30代の若者をターゲットにするため「紙兎ロペ」の原作者ウチヤマユウジ氏を監督に起用した。