◆営業部長A氏の改善方法

 それでは、営業部長A氏のように、「承認をしない」という課題を抱えているエグゼクティブの方をどのように改善したらいいでしょうか。

 大切なのは、「モチベーションを上げる」ことと「モチベーションを下げない」ことは違うということを、まずは認識してもらうことです。部下の中で、上司に「職場のモチベーションを上げてほしい」と思っている人は、いるかもしれませんが、それほど多くはありません。一方で、上司に「職場のモチベーションを下げてほしくない」と思っている部下は、ほぼ全員です。多くのエグゼクティブの方は、「承認をしない」ことで、職場やメンバーのモチベーションを下げてしまうのです。

 「承認行為」は健全な職場を維持するうえで欠かせない栄養分のようなものです。人間には生きていくうえで必要とされる摂取カロリーがありますが、それと同じように「承認行為」とは、職場での栄養分なのです。

 特に必要となるのが、以前コラムでもお話ししたことがある、「存在の承認」です。「存在の承認」とは、あいさつをする、話を聞く、変化に気づく、声をかける、メールに対して返事をする、うなずく、などということです。このようなちょっとしたことの積み重ねが大切になり、そのことによって、部下はモチベーションを下げずに、仕事に取り組めるのです。

 今回は、営業部長A氏を例に、多くのリーダーが抱える「部下の承認をしない」ことに着目して、その改善方法を解説しました。次回以降、様々な実例を交えて、エグゼクティブ・コーチングの極意についてお話ししていきたいと思います。

細川 馨(ほそかわ・かおる) ビジネスコーチ株式会社 代表取締役
細川 馨

 外資系生命保険会社に入社し、支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。
 2005年にビジネスコーチを設立。エグゼクティブコーチ育成のスクールを主宰。著書に『あなたの成果が爆発的に飛躍するできる仲間の集め方』(日経BP社)、『上司は社員と飯を食え』(日経BP社)、『「右腕」を育てる実践コーチング』(日本経済新聞出版社)など。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。