植田寿乃
キャリアコンサルタント/ダイバーシティコンサルタント

社長の前では大賛成!でも実は・・・

 「専任として抜擢された2007年からの1年、試行錯誤の連続で困ったこと、迷ったことがたくさんありました。でもそんな時に相談に乗ってくれて、私を応援し、支えてくれたのは・・・社長でした。月に1度は社長と話をしていました。まさに私にとってのメンターでした」

 今年初の「第32回女性と組織の活性化研究会」(http://newo.jp)の事例発表は日立化成工業CSR室ダイバーシティ推進グループの矢島啓子氏が行いました。彼女は、担当してからの3年間の企業としてのダイバーシティ活動への取り組みについて語ってくれましたが、その内容で注目されたのは、経営陣や彼女を取り巻く男性管理職への啓蒙活動でした。

 女性比率が1割程度という日立化成がダイバーシティ活動に取り組んだ前提には、女性活躍推進よりもグローバリゼイションがありました。売り上げの海外比率が増え続け、逆転することが確実であることが予測された2006年に女性社員の活用機運が高まり、執行役員を対象とした講演会や女性社員の意見交換会などがスタートしています。

 営業としてバリバリ活躍する矢島さんを、翌年CSR室の中の専任の担当者として任命したのも、人事部や人材開発室に担当者を置く会社が多い中では、会社の取り組み姿勢をはっきり示しています。営業からの異動に彼女が大きな戸惑いを感じていたところ、「ダイバーシティは経営戦略だ!」

 という社長の一言で、ぐんと心が動いて、だったらやってみようと言う気持ちになったそうです。女性が活躍できない会社がグローバル展開などできるはずもない。まずは女性が当たり前に活躍できる会社になることから始めようということです。やはり、経営者がどんな気持ちで、どんな覚悟でダイバーシティや女性活躍推進に取り組むかが、重要なポイントなのでしょう。

 「最初のころは、社長の前では『賛成』というそぶりで何も言わない・・・でも陰では、ということもありました。しかし、今では、その場でいろいろ意見を言ってくれるようになりました。分からないことや、質問など、何でも言ってくれるようになりました。今では推進派という方もいらっしゃいます」

 社長の前で何も言わない・・・男性社会、オールド・ボーイズ・ネットワークの暗黙のルールでは当たり前のことかもしれません。どこの会社でも、良くみられる風景です。このコラムのタイトルにもある「本音」と「建前」は違って当たり前という状況を打破するのは、かなり大変なことですが、彼女たちの個別に向き合った熱意こそがそれを変えていきます。

 「根回しというわけではありませんが、一人ひとりとじっくり話すと、ちゃんと理解してくれるようになります。やはり分かってない、誤解している方がいらっしゃるのです」

 ダイバーシティに関して、経営陣全員が理解、納得するためにこの1対1の対話は重要なポイントと言えるでしょう。現時点で女性活躍から、グローバルダイバーシティへという本格的な取り組を、管理部門、営業部門を中心とした事業部長で構成するプロジェクトメンバーでされているという状況は、まさに、女性活躍推進が女性の枠を超えて社内にうまく浸透している素晴らしい事例と言えるでしょう。