「コーチングをやっても部下は変わらない」という諦め感

 "アンチコーチング派"の中には「効き目がない」という人も少なくありません。

 「部下に問いかけても答えがなかなか返ってこないんです。だからしびれを切らして私から指示してしまいます。だいたい私がしゃべる側で、部下は聞くばかりです」

 これは、コーチングを行っていたにもかかわらず、いつの間にか指示・命令型の会話になってしまうケースです。こういった場合の多くは、部下からすれば「問いかけられている」というよりも「問い詰められている」という感じでしょう。上司のおしゃべりが始まると、部下は「また昔の自慢話を聞かされるのか」とうんざりしてしまいます。

 「部下に質問しても、ありきたりの答えしか返ってきません。部下は私が日頃言っていることを復唱しているとしか思えません。これをコーチングと言うのでしょうか」

 部下は上司に質問されると正解を探そうとします。そして上司の方針に沿った解や、上司が聞いて喜ぶであろう選択肢を口にします。たとえば、上司が「どうすれば業績が上がると思う?」と聞けば、部下は「重点商品のAを提案することです」と答え、「どうしてそう思うの?」と聞くと、部下は「それが営業部の方針だからですよ」と答えるような会話です。このような面談から気づきや意欲は生まれません。

 「研修で習った通りに優しい言い方でコーチングをしても、なんだか警戒されているみたいで、部下の本音をなかなか引き出せません」

 日頃あまり構ってくれない厳めしい上司が、研修を受けたあとから急に優しくなって、「最近どう?」なんてねこなで声で聞いてきたら、部下が警戒するのは当り前です。「なんだか変だぞ。もしかすると異動の前触れかな? ここはうかつに答えられないぞ...」などと余計なことを考えてしまいます。そのうちに大した意味もないとわかったら、「さては、またどこかで妙なセミナーでも受けてきたな。まあ、しばらくしたら元に戻るだろう」を思われるのが関の山です。