キャリア資産とは何か

 キャリアも金融資産と同様に、個人にとっての重要な資産ではないかと思う。マネーの世界で使う「アセット(資産)」という言葉には、人にとって有用なもの、貴重なもの、強み、利点、宝という意味もある。

 一般的にはキャリア資産というと、客観的キャリアに代表される職務経歴とその過程で習得した知識やスキル・資格などがイメージされる。その人が社会人として仕事をスタートして以来、仕事の価値を上げるために身に付けてきた知識やスキルやコンピテンシーなどのすべてが、一般的に言うキャリア資産である。

 例えば、新人としての社会人スキルやビジネスの基本知識の習得に始まり、次のステップで営業スキルを磨き、商品知識を深めながら、お客様とのやり取りのなかで営業職としての有効なコンピテンシーを身に付け、さらにマネジメントスキルを修得する、といった流れである。これは毎日の仕事を通じて身に付けていくものであり、日々の日常活動こそがキャリア資産の源であると言える。

 客観的キャリアに代表されるキャリア資産は、それはそれで重要であるが、ライフ・キャリア・チャート分析を経ると、それ以外の自分自身のキャリアの資産価値に気が付く人が多い。

 例えば、自分にとってネガティブな、あるいはポジティブなターニングポイントとなる出来事から得た新しい考え方や人間的な成長もそうだろう。また、きっかけはネガティブなターニングポイントだった出来事が、その後の考え方の転換や自分自身のがんばり、周囲からのサポートにより、一定の時間を経て多くの学びと成長をもたらした、という経験をされた方も少なからずいるだろう。

 キャリア資産ではこういった主観的キャリアこそが大切である。ライフ・キャリア・チャート分析で、自分の持っているキャリア資産に初めて気付く人もいる。それまで本人も気付いていなかったキャリア資産は、企業にとっても重要な情報となる。

 しかし、金融資産と同様、キャリア資産も持っているだけでは、それを活かすというレベルには至らない。キャリア資産は個人の価値観に基づいた役割を全うできるからこそ、その資産価値が増幅するのではないだろうか。

 逆に言えば、より良いキャリア資産の構築には、個人の価値観を実現しうる環境が必要である、ということだ。もちろん組織には組織の価値観があり、その中で個人の価値観をすべて実現することは現実的には難しいかもしれない。しかし、それは全く同じでなくても、共存できるものでなくてはならないし、少なくとも自分自身の心の中で折り合いのつけられるレベルでなければならないだろう。