役割の再定義と選択肢

 シニア層のキャリアパスを設定している企業はどれほどあるのだろうか?多くの企業では40代ミドルまでのキャリアパスは引かれているが、その後は描かれていないのが現実だろう。年功の流れに乗ってリタイア準備に入らせるか、ほとんど個人任せという企業も多いのではないだろうか。

 しかし、シニア層に今後の10年15年を活躍してもらうのであれば、明確なキャリアパスとその役割が描かれている必要があるはずだ。少なくとも、新たな役割がまずは設定されなければならない。

 その時、成果主義の崩壊により組織的な対応が意味をなさない現状では、ますます"個"に着目する必要があることは以前述べた通りである。役割の設定にあたっても、"個"が大切にするべきものを反映することが必要である。

 私は、シニア層の新たな役割を設定するにあたっては、『自分にとっての意味付け』『自己決定』『周囲の承認』の三要素が大切であると考えている。

 まず『自分にとっての意味付け』とは、新しい役割を果たすことに自分なりの意味を見いだせるかどうか、自分が培ってきたキャリアの意味付けとの重なりがどれほどあるか、ということである。自分にとっての意味があることであれば、充実感を得ることにつながるだろう。

 『自己決定』とは、文字通り自分自身が役割を選択できるということである。もちろん勝手にすべてを選択するということではなく、選択肢の中から自分なりの価値観を実現しうる役割を選択できる、ということである。自分自身が何らかの決定にかかわることは、自覚的なキャリア選択につながるだろう。

 『周囲の承認』は、新しい役割を持続的に全うしていくために重要な要素である。いくら意味のあることを自分で選択しても、何のフィードバックもなく淡々と一人で仕事をしていくような役割では、継続していくことは難しい。今まで誰も実現したことがない新しい役割でも、何らかのフィードバックがあって、結果として周囲の役に立っているという実感があることは、役割達成に大きく影響する。

 また、これらの三つの要素はそれぞれが微妙にかかわり合っている。理想的には、自分にとって意味のあることを自ら選択し、周囲に役立っているというフィードバックをもらいながら、新しい役割を全うすることである。しかし、自分で選択できなかったものの意味付けは強く感じるとか、最初は意味を感じなかったけれども周囲からのフィードバックをもらっているうちに新たな意味を感じるようになる、ということもありえる。そう考えると、シニア層の新たな役割設定にあたって、三要素を盛り込むことを意識しながらも、すべてにこだわる必要はないかもしれない。しかし最も重要なことは、選択肢を自分で選べるということである。自分の役割決定に自分自身がかかわることができれば、自分にとっての意味付けや周囲の承認は、時間の経過とともに実現できることもあるだろう。