現場の人材育成リーダーの役割

 行動変容の4つのステップを踏む時には、教えて、やって見せて、やらせてみて、アドバイスする過程が必要だ。これらは日常の仕事の現場で行われることによって効果が上がる。シニア層の新しい働き方や新しい役割を実現させていくためにも、現場の人材育成リーダーは必要不可欠な存在となるだろう。もちろんシニア層の活躍推進だけでなくダイバーシティーの観点から、あらゆる人材に対するサポートが求められる。

 そもそも人材育成とは、現存する人材の能力や人間力に新たな能力や人間力を付加していくことである。具体的に言えば、能力開発のキッカケをつくり、動機を増幅し、行動に結びつけ、その結果、人材として能力や人間力を高めていくことである。それはまさに人材が人として成長するということであり、人は成長することにより新たな価値を生み出せるのだと思う。つまり、人材育成とは人の成長そのものを実現していくことである。

 ロミンガー社の「人材が育つうえでどのような出来事が有益であったか」という調査によれば、経験70%・薫陶20%・研修10%という分布になっている。経験とは仕事そのものを通じての経験学習である。この経験学習は知識・スキルの学習はもとより、仕事自体が人と人のかかわりの中で成されることを考えると、人間的な側面やその人の根源的な動機への影響、さらに行動面への影響など、人そのものとしての成長にもつながるだろう。経験による新たなスキルの習得や知識のインプットはもちろんあるが、何よりも人と人とのかかわり方が鍵となるということである。前述のロミンガー社の調査における薫陶(人を介しての気付き)20%と合わせれば、人が人を成長させる要素は90%前後あるということになる。知識やスキルが人を成長させるのではない。新しい知識・スキルを身に付け、新たな経験を積みながら人とかかわるなかで、刺激やフィードバックをもらい、さらなる成長へつながっていくのではないだろうか。