シニア層を活かす環境整備の視点

 一方、企業にも環境を整える責任があるだろう。雇用延長で65歳までしっかり働き相応の成果を出してもらう必要があるからだ。基本はきっちりとした環境整備と人事制度で、成果に連動した「甘え」を許さない報酬制度の仕組みが必要だ。そこそこの仕事と賃金、そこそこの働き方といった中途半端な仕組みは逆に、自律したシニア層のやる気をそぐことになりかねない。

 少子高齢化社会の進行で就業人口や働き方の変化が予測されるなか、シニア層活躍の場を確保することは社会的にも重要な課題の一つである。この前提でシニア層を活かしていこうとするときには両極の二つの視点が必要である。一つは、企業人追求型のシニアを支援する視点、もう一つが自由人追求型のシニアを支援する視点である。

 企業人追求型シニア支援の視点とは、従来とは異なる全く新しい考え方に基づく人事賃金制度構築を中心とした企業人事課題である。一方、自由人追求型シニア支援の視点とは、シニア個人の働き方や生き方などの個人の意識変革や職場環境整備の視点である。シニア層個人への意識変革もさることながら、特に従来とは異なる全く新しい考え方に基づく人事制度構築は企業の人事課題としても大きな課題である。企業の人事部は早くこの課題に着手していく必要がある。

 また、シニア層に居心地の悪さを感じさせる職場環境は避けなければならない。人が強く年齢を自覚する出来事の一つに、「幅広い年齢層が集まる場所で居心地の悪さを感じた時」という項目がある。最近、私自身も感じることが多くなってきた内容だ。その裏にはシニア層のひがみに似た感覚もあるかもしれない。実際に疎外されているわけではないのに、違和感や疎外感を持ってしまうことがあるのも事実だ。その時に、あきらめモードやひがみモードに入らせずに、自然にその出来事と向き合えるような雰囲気の職場環境であることが大切だ。シニア層の排除でもなく、アクティブシニアだけを求める雰囲気でもなく、培ってきたキャリア資産や知恵を自然に、かつ、継続的に活かしていける環境が理想的だ。

 そのポイントになる考え方は融通性と柔軟性ではないだろうか。シニア層だけを特別扱いするわけにはいかないというのが企業の本音だろうが、逆に、私はシニア層を活かす人事の仕組みとしてはそこに着目することが重要だと思う。