松丘啓司
エム・アイ・アソシエイツ(株) 代表取締役社長

 前回は、日本企業が人材開発パラダイムの転換期にあることについて述べました。確立した事業を持続的に拡大していくことのできる人材の育成に主眼を置いた旧パラダイムの人材開発では、人口減少社会に適応することが困難です。何も手を打たなければ企業は縮小均衡の悪循環から脱せられなくなってしまいます。新たな経営環境の中で、成長に向けた方程式を再構築するために、人材開発パラダイムの転換が求められています。

 今回からは、新たな人材開発パラダイムとは何か、具体的にどのような変革が必要とされるかについて述べていきたいと思います。

進歩や創造は「違い」から生まれる

 新たな人材開発の方向性は、これからの企業における成長モデルのあり方によって規定されます。日本企業に求められる新たな成長モデルは、これまでにない需要を継続的に生み出していくことを可能とするものでなければなりません。国内外における多様化した顧客ニーズを掘り起こし、それらに応える多様な価値を創造できる企業のみが、今日の非連続的な変化の中で成長し続けることができます。

 新たな人材開発パラダイムは、「進歩や創造は『違い』から生まれる」という考え方に立脚する必要があります。違いとは、組織において人材の異質性が顕在化することです。異質とは文字どおり相いれないものであるため、異質が顕在化することによって「矛盾」が生じます。この矛盾をいかに解決するかというのが、ダイバーシティマネジメントの主要テーマになりますが、それについてはまた、別の回で解説します。

 以下に異なる分野の学者のコメントを紹介します。表現方法は異なりますが、どれも違いや矛盾が進歩や創造にとって不可欠であることを述べています。

「違い(差異性)から利益を生みだす。それは資本主義の基本原理である」(岩井克人、『会社はだれのものか』、平凡社)

  • 経済学者
    「違い(差異性)から利益を生みだす。それは資本主義の基本原理である」(岩井克人、『会社はだれのものか』、平凡社)
  • リーダーシップ学者
    「対立する価値観の視点を取り込むことが適応の成功のために不可欠である」(ロナルド・ハイフェッツ、『リーダーシップとは何か』、産能大学出版部)
  • 哲学者
    「矛盾は、未来への展望と過去への遡行という二つの見方をもたらし、それが弁証法の創造性へとつながる」(カトリーヌ・マラブー、「弁証法の可能性」、『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー』2007年4月)