「キャリア自立」の促進が「違い」を活かすための条件

 違いが進歩を生むからといって、やみくもに異質な人材を集めればよいわけではありません。顧客の多様性に対応するために、組織内の多様性を高めることは重要ですが、単に違いが存在すればよいのではなく、違いが発揮(顕在化)されなければ創造性は生まれません。

 組織構成メンバーの一人ひとりが、違いを発揮できている状態が「キャリア自立」できている状態といえます。キャリア自立とは、自分の成長を会社任せにするのではなく、自分自身の責任で切り開くスタンスが身についていることです。そのことは、仕事の場において、個々人がその人ならではの個性を発揮することを意味します。それによって、はじめて違いが価値を生みます。そのため、新たなパラダイムにおいては、個々人のキャリア自立を促進することが人材開発の大前提になります。

 元来、人は多様なものです。同じ国籍、同じ性別、同じ年代であったとしても、一人ひとりの興味や価値観はすべて異なります。同質的組織といわれる組織においても、組織構成メンバーの一人ひとりを見ると多様です。しかし、旧パラダイムにおける同質的組織は、多様な個人を同質化させようとするものでした。そのような環境に異質な人材が存在しても、組織は同質化を求めます。したがって、組織に「違い」が存在することよりも、組織が個々人の「違い」の発揮を促すかどうかがより重要です。

 旧パラダイムでは、キャリアは会社が示しました。個人にどのような成長を望むかというキャリアコースは、会社が定めるものでした。キャリア開発とは、個々人が会社から提示されたキャリアコース(多くの場合は昇進の階段)を目標として、努力することを意味しました。それはキャリア自立よりも、「キャリア依存」を促すシステムだったといえます。