キャリア開発の「誤解」を払拭する

 キャリア依存というと聞こえがよくないかもしれませんが、このシステムはたいへんうまく機能しました。なぜなら、当時は個人のキャリアを会社がある程度、「保障」できたからです。個人にとっては、5年後、10年後に何を目指せばよいかが明確でした。いわばキャリアの見通しがきいたのです。先が見えるという安心感が、個人の忠誠心とチャレンジ精神を引き出すことを可能にしました。

 しかし前回にも述べたとおり、このシステムは正ピラミッドの組織構造ゆえに成立しえたものです。また、今日において、企業は5年、10年先のキャリアコースを保障できるものではありません。変化が激しいために、キャリアコース自体が可変的だからです。したがって、企業はキャリア開発の概念自体を見直さなければなりません。現在も暗黙のうちに存在するキャリア開発の「誤解」を払拭しなければならないのです。図1に見直されるべき誤解を3つ掲げます。

(1)市場価値は目的ではない

 「キャリア開発=自分の市場価値を高めること」と信じる人が、特に若い世代において少なくありません。そのような誤解をあおる転職広告が氾濫していることにも原因があるでしょう。確かに、かつての年功序列の人事制度のもとでは、キャリアを積めば年収は増加するものでした。しかし、今日では言うまでもなくその方程式は成り立ちません。