「尊重」とは何か

 リーダーがメンバーの潜在力を引き出すには、メンバーの価値観(「内の軸」)を理解し、「尊重」できなければなりません。多くの場合、メンバーはリーダーから見て、未熟で自立していないように思われるかも知れません。実際に、「うちの部下を尊重していたら成果など出ない」というような発言を耳にすることも少なくありません。

 しかし、たとえメンバーが未熟で自立していなくても、リーダーは部下を100パーセント尊重しなければなりません。なぜなら、メンバーの自立と成長を促進するために、尊重することが必要なのであって、成熟して自立したメンバーを率いるのであれば、リーダーシップはさほど必要がないからです。

 「尊重」するとは、メンバーの価値観を受け容れることです。それは、自分を相手に投影して、相手の価値観に共感できるようになることです。それによって、リーダーはメンバーが自分自身の「内の軸」に従って仕事に取り組むことを応援できるようになります。

 このように書くと、「それはメンバーを甘やかしているだけではないか」という疑問を持つ人もいるでしょう。しかし、それはまったく逆で、メンバーに対して、より厳しさを求めることになります。

 なぜなら、仕事の場において「内の軸」を発揮するということは、ただ与えられた仕事をすればよいのではなく、そこにその人ならではの価値を加えなければならないことを意味するからです。さもなければ、その仕事をするのは他の人でも構わないということになり、その人の存在意義が問われる結果になります。つまり、その人にしかできない「差別化」が求められるのです。

 また、「内の軸」に従って仕事をするということは、「自律的」に働くことを意味します。自律とは自由を持つことです。ビジネスの場における自由には、かならず自己責任が伴います。自己責任とは、言い換えると「コミットメント」を果たすということです。それはすなわち、やるべきことを約束し、約束したことはかならず実行するということです。約束を守れなければ評価されないのは当然です。

 リーダーには、メンバーの「内の軸」を尊重したうえで、メンバー自身が差別化し、約束を守ることを支援する役割が求められるのです。

(注)ここで言う「自律」とは、自分の「内の軸」を基準に判断し、行動することを意味しています。一方、「自立」とは、自律的に行動することによって実際に成長し、その人ならではの結果を生み出している状態を指しています。