電気自動車はなぜ開発されたか

 メンバーが個々人の価値観を表現し始めると、価値観の違いが顕在化します。価値観の違いは往々にして対立した矛盾を引き起こします。たとえば、勝ち負けにこだわる価値観と、良好な人間関係を重視する価値観が、組織においてしばしば対立するのはその一例です。

 このような矛盾が生じた場合、異なる価値観を「調和」する努力が図られなければなりません。その努力を避け、異なる価値観を持った人の対立状態を放置すると、組織の生産性が低下してしまうことはいうまでもありません。かといって、それぞれの人を隔離した状態で仕事をしても、チームとしての連携は生まれません。また、一方の価値観を尊重し、他方を無視すると、無視された価値観を持つ人の潜在力は活かされなくなってしまいます。

 したがって、リーダーは異なる価値観を調和しなければなりません。しかし、それを行うことによって進歩が生まれるのです。一例として、「電気自動車がなぜ開発されたか」という問いについて考えてみましょう。

 電気自動車の開発は2つの異なる価値観の矛盾を解決するものです。1つは、「地球環境を守るために人は欲求を抑えなければならない」という価値観。もう1つは、「豊かな生活の利便性を追求する欲求を満たしたい」という価値観です。この矛盾を放置すると、環境至上主義者と利己至上主義者の対立が生じ、対立が激しくなればなるほど、双方の距離は遠ざかってしまいます。

 これ以上、説明するまでもなく、電気自動車は2つの価値観の調和を図り、「地球環境を守りつつ、生活の利便性も維持する」という新たな価値観が導き出された結果、開発されたものです。このように価値観の調和から生み出される進歩が「シナジー」なのです。

 異なる価値観からシナジーを生み出すためには、互いが自分の価値観を押し通そうとするのではなく、相手の価値観を尊重する立場に立つ必要があります。まず、相手の価値観に自分自身を投影することによって、相手の価値観を活かしながら自分の価値観も活かす方法が見えてくるのです。シナジーは互いの価値観を尊重する組織においてのみ生まれるものといえます。