「共有価値観」でメンバーは自律的に行動できる

 共有価値観とは、文字通り組織のメンバー全員が共有すべき価値観です。価値観は人が行動する際に選択を行う基準であるため、共有価値観は組織メンバーの「行動規範」ともなります。つまりそれは、組織メンバーが「何を行い」「何を行わないか」を示す指針です。また、共有価値観は、共有価値観に従って選択を行った結果、組織のビジョンの実現につながるプロセスを示すものでもあります。

 共有価値観には当然、リーダー自身の価値観が反映されなければなりません。しかし、同時にそれは組織のメンバーに支持される価値観でもなければなりません。異なる価値観を持ったメンバーから支持されるために、共有価値観には誰からも「良い」とみなされる普遍性が必要です。極端な例ですが、「目的のためには手段を選ばない」とか「弱肉強食」とかいった価値観は、普遍的に支持されないため共有価値観にはなり得ません。

 共有価値観を作る際には、リーダーがそれを一方的に示すのではなく、むしろメンバー主体で共有したい価値観を考えてもらうアプローチの方がよいでしょう。そのうえで、リーダーの価値観を込めていけばよいのです。

 しかし、そのようにして、いったん共有価値観が作られたら、その後は厳格に扱われなければなりません。つまり、共有価値観に反した行動は、たとえ目の前の利益につながったとしても、けっして行わない、行ったとしても評価されないといった徹底が必要になります。さもなければ、共有価値観はただのきれい事と見なされてしまうからです。

 組織に強固な共有価値観が得られれば、リーダーが一人ひとりのメンバーと価値観の調和を図る作業は必要でなくなります。メンバーは自分の価値観と共有価値観との調和を意識すればよいからです。それによって、メンバーの一人ひとりが自律的にシナジーを生み出そうとする価値創造型の組織が作られます。このような自律的な創造性を持った組織を作る能力が、これからのリーダーには求められているのです。

松丘 啓司(まつおか・けいじ) エム・アイ・アソシエイツ株式会社 代表取締役
松丘 啓司

 1986年東京大学法学部卒業後、アクセンチュア入社。同社のヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナーを経て、2005年に企業の人材・組織モデル革新を支援するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立。同社ではパフォーマンスマネジメント、ダイバーシティ&インクルージョンなどの領域を中心にサービスを提供。主な著書として、『人事評価はもういらない』『論理思考は万能ではない』『アイデアが湧きだすコミュニケーション』『ストーリーで学ぶ 営業の極意』『提案営業の進め方』『組織営業力』などがある。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。