多様性を活かす組織を創ることが企業の目的

 さらにドラッカーの引用を続けます。では、企業の目的とは何であるのかというと、彼は「顧客を創造すること」と断言しています。「企業とは何かを決めるのは顧客」にほかならないため、顧客を創造することこそが企業の目的であり、それは潜在需要を有効需要に変えることであると述べています。

 この定義は今日の企業にとって、全面的に受け入れられるものでしょう。今日、企業は新たな需要を開発し続けることによってのみ成長することが可能だからです。では、多様性は顧客を創造するという目的を実現するための「手段」なのでしょうか。

 これまでこの連載では、多様な個人の「違い」を活かすことが進歩や創造の源泉であることを述べてきました。企業における進歩や創造とは、新たな需要の開発を意味します。したがって、多様性を活かすという手段によって、顧客の創造という目的が達せられるという言い方はある意味で正しいと言えます。

 しかし、今日において、新たな需要の開発に終わりはありません。新たな需要を開発してもその差別化要因は永続しません。そのため、企業は次々と差別化要因を打ちだし、新たな需要を開発し続けられる能力を身につけなければなりません。つまり、顧客を継続的に創造できるかどうかは組織の能力次第であるために、企業にとって先決なのは、それができる組織能力を構築することであると言えます。

 ここに至って、多様性は「目的」となります。多様な人の「違い」を活かし、潜在力を引き出し、成長させ、持続的にシナジーを生み出す組織を作りだすことを企業の目的に置き、それが実現されることによって、新たな需要を絶え間なく開発し、成長し続けることが可能になるのです。