外の多様性を取り入れ、シナジーを生み出す

 組織が多様性を活かす能力を身につけることによって、多様な人材を受け入れることが可能になります。多様性を活かす能力を持たずに、人材の多様性を高めたとしても、多様な違いを活かすことができないため、多様性を活かす能力を身につけることの方が先です。

 組織が多様な人材を受け入れることを必要とする最大の要因は、顧客が多様化していることにあります。企業の外の世界が多様化しているために、内なる多様性が求められるのです。このため、顧客の多様性に応じて需要を創造するためのもっとも効果的な方法は「外と内をつなぐ」こと、つまり、顧客の多様性に対応する人の多様性を組織内部に持つことです。

 多様性の戦略で有名なIBMの「ガースナー改革」では、この「外と内をつなぐ」方法が活用されました。具体的には女性、アジア系、アフリカ系、障害者などの区分によって8つのタスクフォースを編成し、それぞれのタスクフォースが中心となって、顧客創造のための活動が行われました。

 たとえば、中小企業においては女性やマイノリティの経営者が少なくありませんが、IBMはこの活動の結果、それまであまり得意としてこなかった中小企業市場の開拓に成功したと言われています。タスクフォースの成功要因について、ガースナーは次のように語っています。

 「多様性は市場の問題としてとらえました。つまり、多種多様な文化が混在している市場(顧客)をよく知るということです」(「ガースナー改革:多様性の戦略」、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー 2005年3月)

 「外と内をつなぐ」ことによって、多様な顧客の価値観の視点を組織の内部に容易に取り込むことができるようになります。前回、解説したように、異なる価値観同士が調和されることによって、シナジーを生み出すことが可能になり、それによって新たな需要が開発されるのです。そのためには、顧客の多様な価値観が拒絶されるのではなく、受容され、尊重される組織であることが不可欠ですつまり、組織が多様性を活かす能力を有していることが前提になるといえます。

松丘 啓司(まつおか・けいじ) エム・アイ・アソシエイツ株式会社 代表取締役
松丘 啓司

 1986年東京大学法学部卒業後、アクセンチュア入社。同社のヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナーを経て、2005年に企業の人材・組織モデル革新を支援するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立。同社ではパフォーマンスマネジメント、ダイバーシティ&インクルージョンなどの領域を中心にサービスを提供。主な著書として、『人事評価はもういらない』『論理思考は万能ではない』『アイデアが湧きだすコミュニケーション』『ストーリーで学ぶ 営業の極意』『提案営業の進め方』『組織営業力』などがある。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。