判断は価値観に依存する

 では、人は何に基づいて判断を行うのかというと、それは判断を行う人の「価値観」に依存します。論理思考によって、判断すべき課題や選択肢を特定した後、決める際には価値観が作動するのです。価値観は外の世界にあるものではなく、人の内面に備わったものです。価値観は人が心の奥底に持っている内的動機や、これまで受けた教育、数々の体験などによって形成される、その人特有の判断基準です。

 人は価値観で判断すると聞くと、奇異な印象を持たれる方もおられるかもしれません。しかし、価値観とはそもそも、「自分が何を大事にし、何に優先度を置くかを示す基準」と定義されますので、それによって判断が行われることは当然のことです。

 ビジネスの世界における判断には、価値観が必要とされないものも存在します。たとえば、「在庫が一定の水準に減少したら発注する」といった意思決定がその例ですが、そのような判断は人が行わなくても自動化することが可能であるため、「人にしかできない判断は価値観に基づいて行われる」というのが正確な表現でしょう。

 人がビジネスにおける判断を価値観に基づいて行うことをわかりやすくイメージするための一つの方法は、もし、自分が独立して会社を作るとすると、どういう会社を作りたいかを想像することです。

 たとえば、ビジネスモデルを決めるという極めて論理的に思われる判断でも価値観が大きく作用します。ある人は単純明快なビジネスモデルを作りたいと思うかもしれません。別の人にとって、単純明快かどうかはどうでもよく、とにかく深い専門性を突き詰めるビジネスモデルを作りたいと思うこともあるでしょう。

 また、どのような組織を構築するかという判断にも価値観が大きく作用します。ある人は、効率的で統制のとれた組織を作りたいと思うかもしれません。別の人は、できる限り管理の少ない自由度の高い組織を作りたいと思うこともあるでしょう。

 これらは、どちらが正解という問題ではなく、個人の価値観に依存する判断です。