創造的変化はいかにして生まれるか

 同質的な集団から創造的変化を生み出すのが難しいのであれば、異なる記憶の蓄積を持った社外の人材を採用すればよいのではないかと思われるかもしれません。もちろん、それも有効な選択肢ですが、大勢の組織に少数の異質人材が加わっただけでは変化は限定的です。しかし、大勢の異質人材を採用し、有効活用するためには、そもそも異質な人材、多様な人材を活かすことのできる能力が組織に備わっていなければならないことは、これまでの連載で繰り返し述べたとおりです。

 もし、組織がある程度、多様性を活かす能力を身につけることができたとしたら、創造的変化を生み出すための別の方策が見えてきます。それは、すなわち、外部の人材を活用する以前に、そもそも、既存の社員が有している異質な部分を活かすという方策です。それは、これまでのマネジメントの対象とされてこなかった領域です。既存の社員の異質な部分とは、その人、一人ひとりにしかないもの、もっともその人らしいものであり、それはつまり、個々人の内的動機とそこから発するその人独自の価値観なのです。

 これもこの連載で何度か述べたとおり、価値観とは人が選択を行う際の基準です。たとえ同じ経験をし、同じ知識やスキルをもっていたとしても、価値観が異なれば、選択は異なります。選択が異なれば、そこから生まれる未来も異なります。つまり、異なる変化が起こせるのです。

 一人ひとりの価値観が異なるのは、今に始まったことではないことは言うまでもありません。それにもかかわらず、なぜ、今日、それが課題となるのかというと、これまでそれが重視されてこなかったからです。

 価値観は内的動機だけで形成されるわけではありません。組織の有する風土や様々なルールなどの外的要因が、個々人の価値観形成に強く影響します。かつての日本型経営は、このような外発的価値観を強化し、一人ひとりの中にもともと備わった価値観であるかのように内在化させてきました。その結果、組織特有の外発的価値観がメンバーに深く浸透した「同質的組織」が形成されたのです。

 組織で共有する膨大なナレッジをもとに、組織メンバーが同質的な外発的価値観で選択を行っても、そこから大きな違いはなかなか生じません。出てくる発想は均質的になりがちだからです。一方で、組織のナレッジが同じであっても、人によって異なる内発的価値観に基づく選択を行った場合には、異なる発想が生まれてきます。一人ひとりの発想が異なることによって、創造的変化が生まれる可能性が大きく高まるのです。