(3) 3次元:価値観の共有
 組織メンバーが2人だけであれば、2次元思考だけで双方の価値観を活かして、かつ調和を生み出すことが可能です。しかし、組織メンバーが数名を超えてくると、2人ずつの2次元での調和のみでは、組織としての方向性がマネジメント困難になります。価値観の調和によって得られた新たな価値観どうしが、対立を引き起こす事態も生じてしまいます。

 そのため、組織を立体的な3次元で見ることが必要になります。すなわち、連載4回目「シナジーを生み出す矛盾のマネジメント」で述べた「共有価値観」の設定がそれに当たります。

 組織としての共有価値観を持つことによって、組織メンバーは自分自身の価値観と共有価値観の調和を自律的に考えることができるようになります。つまり、自分自身の価値観を活かしつつ、組織メンバーとして求められる行動をとる両立を自発的に行うことが求められるのです。

 重要なことは、リーダーが共有価値観をいかにして作るかという方法論です。それは、上から強制的に押し付けられるものではなく、組織メンバー間での対話を通じて形成されていくものです。そのため、リーダーは対話型のコミュニケーション(問題解決のための議論ではなく、共通の意味を作り出していくためのコミュニケーション)を促進する力を身につけなければなりません。

(4) 4次元:ビジョンの共有
 共有価値観は、組織メンバーが共通して有する「選択のための基準」です。一人ひとりがぶれない選択を行うためには、選択を行う際、その選択を行った結果、どこにたどり着くのか、どうなりたいのか、というゴールがイメージできていることが必要です。それが、いわゆる組織の「ビジョン」です。

 連載3回目「求められる内発的リーダーシップ開発」で述べたように、ビジョンはリーダーのありたい姿に対する思いを込めたものでなければなりません。さもなければ、ビジョンはまず実現しないからです。また、ビジョンには、意義のある目的が含まれ、組織メンバーの自己実現を支援するものでなければなりません。

 ビジョンの設定に際して、リーダーは連載6回目「論理思考と自己理解」で書いたように、将来と現在と過去、外の世界と内の軸を客観視して、未来に対する想像力を発揮できる必要があります。つまり、3次元に時間という視点を加える必要があるのです。4次元での思考とは、そのような思考法を意味しています。

 これからのリーダーには、線から面、面から空間、空間から時間へと視点と思考を巡らせる思考の訓練が求められています。

松丘 啓司(まつおか・けいじ) エム・アイ・アソシエイツ株式会社 代表取締役
松丘 啓司

 1986年東京大学法学部卒業後、アクセンチュア入社。同社のヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナーを経て、2005年に企業の人材・組織モデル革新を支援するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立。同社ではパフォーマンスマネジメント、ダイバーシティ&インクルージョンなどの領域を中心にサービスを提供。主な著書として、『人事評価はもういらない』『論理思考は万能ではない』『アイデアが湧きだすコミュニケーション』『ストーリーで学ぶ 営業の極意』『提案営業の進め方』『組織営業力』などがある。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。