総額人件費管理の考え方

 このように見てくると、昇給は業績の良し悪しに関係なく、世間水準程度は行わなければならないということが分かりました。それでは昇給をしなければならない。しかし業績が悪く、金がない。どうすればよいのかということになります。そこで登場するのが総額人件費管理という発想です。

 企業における人件費は次のように算定することができます。

 昇給は賃金水準に関係する重要な要素ですが、人件費というものは、昇給という要素だけで決まるものではないことがこの算式で分かると思います。必要な昇給は行なう必要があるのです。しかし人件費全体のパイの大きさは限られています。どこかで調整する必要があります。そこでこれら要素についていろいろと対策を考えて総体的に人件費原資に収めるという発想が必要になってきます。次にそれぞれの要素で人件費を抑えるためにどのような対策が考えられるのか考えてみましょう。

(1)人数

  1. 入退社
    a 補充せず自然減を待つ(新卒採用抑制、中途採用抑制)
    b 希望退職を募る
    c 弾力的な運用ができる雇用形態へのシフト(パート、派遣、業務請負、業務委託等)
  2. 人の質(人の質を上げることによって、少ない人数で高い成果を上げるー少数精鋭)
    a やる気向上施策
    b 教育訓練の充実(OJT、offJT)

(2)賃金水準

  1. 昇給ストップまたは昇給率を低める
  2. 賞与で調整する
  3. 時間外労働の削減
  4. 退職金制度の改訂
  5. 賃金水準の低い雇用形態へのシフト(パート、派遣、業務請負、業務委託等)

(3)共通人件費

  1. 福利厚生費の削減
  2. 教育訓練費の削減
    育児休業、保育施策の充実による知識・スキル・経験を持った社員の退職防止、による教育訓練費の削減

 ここで重要なことは、昇給ストップだけが人件費を規定する要素ではないということと、必要な昇給は行なわなければならないということです。昇給を行なわなければ、中途採用ができないなどの副作用が生じます。上記の施策を複合させて人件費を総体として抑えることが必要になってきます。