組織が機能不全に陥る原因

 コンプライアンス違反が起こりやすい組織に共通して言えることは、組織内でのコミュニケーションが不足しているということです。何でも話し合える環境がなく、コミュニケーションが足りないために、組織が機能不全に陥り、コンプライアンス違反を引き起こすのです。

組織が機能不全に陥る原因は次の5つです。
《第1の原因:信頼の欠如》
 組織のチームワークは信頼を築くことから始まります。信頼している相手には、非難を恐れずに、自分の間違いや弱み、不安をさらけ出すことができますが、信頼していない相手には「弱みを見せたくない」と思ってしまいます。互いに信頼関係を結ぶためには、まず、自分が「完全無欠」でありたいという気持ちを克服することが必要です。

《第2の原因:衝突への恐怖》
 衝突を避け、自分の意見や不安を押し殺して作られる調和は表面的なものです。問題のために徹底的に議論し、衝突して初めて組織として実のある調和が生まれます。

《第3の原因:責任感の不足》
 組織の決定や計画の実行を支持する意識が不足すると、問題に対する意見や態度が曖昧になります。自分の思い通りの決定や計画ではなくても、徹底的に議論した結果であれば、最初から支持していたと思って責任を果たすことができるのです。

《第4の原因:説明責任の回避》
 全員が決定や計画を支持することができたら、それについて水準の高い仕事をするよう、互いに説明責任を求めることが必要です。

《第5の要因:結果への無関心》
 これは、メンバーが自分の利益(満足度や評価など)を優先して、組織の結果(目標)を犠牲にすることです。目標を明確にして、メンバーが自分の地位や自尊心よりも、組織を優先するようにしなければなりません。

 話が少しそれますが、この3月に行われた第2回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で、日本チームが2連覇を果たしました。選手たちが全力を尽くし、チームのために一丸となって戦う姿を見て、感動を覚えた人は多いのではないでしょうか。私には、選手たち全員に、「チームのために戦う」という意識が浸透しているように見えました。その意識のもと、「優勝」という目標に向かって、チームで議論し合い、ぶつかり合い、責任を持って自分の任務を果たしたのだと感じました。そして、何よりも、チームの中に強い信頼関係があったからこそ、優勝できたのだと思います。

 このような強い信頼関係があり、ゴールが共有できている組織は、機能不全に陥ることはありません。ましてや、コンプライアンス違反が起きることもないはずです。

 今回はコンプライアンス違反を引き起こしやすい組織に焦点を当ててお話しました。次回以降、ビジネスコーチングの手法を利用して社内のコミュニケーションを活性化し、コンプライアンスを強化していく方法について、解説していきます。

細川 馨(ほそかわ・かおる) ビジネスコーチ株式会社 代表取締役
細川 馨

 外資系生命保険会社に入社し、支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。
 2005年にビジネスコーチを設立。エグゼクティブコーチ育成のスクールを主宰。著書に『あなたの成果が爆発的に飛躍するできる仲間の集め方』(日経BP社)、『上司は社員と飯を食え』(日経BP社)、『「右腕」を育てる実践コーチング』(日本経済新聞出版社)など。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。