1つ目の「言葉に合わせる」とは、相手が使った言葉を繰り返して使うということです。まずは「最近、新規の顧客を獲得できたんです」と言ったら、おうむ返しに「新規の顧客を獲得できたんだ」と言ってみましょう。自分が発した言葉であっても、あらためて他人から言われてみると、承認されているように感じるのです。また、相手の話を受けて自分が話すときも、相手が使った言葉を織り交ぜながら話すと、相手に話をしっかり聞いていたことが伝わり、より効果的です。

 2つ目の「表情を合わせる」とは、具体的に言うと、相手が楽しい表情をしていたら楽しい顔を、悲しい表情をしていたりしたら、それに合わせて悲しい顔をするということです。相手に「共感」していることを伝えられるとともに、相手の話の内容や出来事が自分の身に起きたように感じられるようになり、相手が本当に言わんとしていることが分かりやすくなります。

 3つ目の「ジェスチャーを合わせる」は、相手が大きなジェスチャーを交えて話す人であれば、自分もジェスチャーを交えて話すということです。もし、相手が大きなジェスチャーをしているのに、あなたのほうはただ淡々と話すだけだったとしたら、相手は「話していてもつまらない」と思ってしまうでしょうし、反対にジェスチャーが小さめの人に、あなたが大きなジェスチャーを交えて話したら、萎縮させてしまうからです。相手に合わせたジェスチャーをとることで、相手の防衛本能が解け、ざっくばらんに本音を話してくれるようになります。

 4つ目の「声のトーン・ボリュームを合わせる」も重要です。ほんの些細な気遣いですが、声のトーンやボリュームを合わせるだけでも、相手はあなたに心を許し、自由に話をし始めます。

 話しやすい雰囲気を作り、共感をしながら傾聴することで、相手に考えをのびのびと語ってもらうことができるのです。リーダーがこれを実践すれば、メンバーへの理解がより深まりますし、メンバーも実践することができれば、職場の雰囲気も自然と良くなっていきます。また、コミュニケーションも活発になり、不正の起きないコンプライアンス意識の高い組織になっていくはずです。

 今回は、コンプライアンス意識を高めていくために、人間理解力をさらに深める傾聴、共感というコーチングの手法について詳しくお話しました。次回は、コンプライアンス意識が高く、成果を出す組織になる最終段階として、ビジョンと価値観について解説します。

細川 馨(ほそかわ・かおる) ビジネスコーチ株式会社 代表取締役
細川 馨

 外資系生命保険会社に入社し、支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。
 2005年にビジネスコーチを設立。エグゼクティブコーチ育成のスクールを主宰。著書に『あなたの成果が爆発的に飛躍するできる仲間の集め方』(日経BP社)、『上司は社員と飯を食え』(日経BP社)、『「右腕」を育てる実践コーチング』(日本経済新聞出版社)など。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。