それはなぜなのか?私たちは成果主義、能力主義という環境の中で、結果を出すことに集中して、仕事をしてきました。その過程のどこかで、心を使う、つまり自分自身の心や周りの人の心を意識しながら、関係性を育むことをないがしろにし、置き忘れてきてしまったのではないでしょうか。

 それに気付いたのが、成果主義、能力主義の先進国である米国のピーター・サロベイ、ジョン・メイヤーという二人の学者です。二人は1987年に、社会生活を育むうえでIQ以上に、EQ(Emotionally Intelligence Quotient=心の知性、社会的知性)が大切であると提唱しました。のちに、ダニエル・ゴールドマンが著した「EQ」は全世界で訳され、「心の知性」、つまり心を使うことの重要性に多くの人があらためて気づきかされました。そして、このEQは、人間力と同じ概念なのです。

 EQ=人間力は測ることもできます。私は1998年にEQジャパンのアセスメントに出会い、それを研修に活かしています。自分の人間力、つまりEQを知ることは、心の人間ドックに入ることにほかなりません。EQはIQと違って変化します。心を磨けばEQは高まりますし、心を使うことを忘れていると、錆つき低下します。低下した状態だと、自分の心の状態として好ましくないだけでなく、周りの人たちとの関係も上手くいかなくなります。だから、時々はEQを測りましょうと、私は説明しています。自分のEQを知り、人間力を磨き続けることが重要なのです。

 「人間力なんていらないよ」と考える人もいるかもしれません。もし、あなたが無人島に住んでいるなら、確かに人間力なんて必要ないでしょう。しかし、社会生活を営む上で人間力は不可欠です。もちろん、会社においても同様です。人間力をうまく発揮できている人が多い組織は、非常に活性化しています。