左脳だけでは解決できない

 コンピューターの進化とともに訪れた情報化社会の中で、時代は左脳万能へと突入していきました。論理的思考で物事は何でも解決できると信じたのです。

 優れた問題解決の手法が発表されると、多くの企業は次々とそれに飛びつき、管理職に学ばせました。プロジェクト管理、クリティカル・シンキング、アクション・ラーニング・・・。コミュニケーションにおいては、相手をどうやって説得するかの「プレゼンテーション術」「ディベート術」。また、組織や部下のモチベーションの問題に対しても、「ポジティブ・シンキング」「ファシリテーションスキル」「コーチングスキル」といった、スキルとテクニックで対処できるはずだと考えました。

 左脳がつかさどっている部分だけを使って、仕事をする、部下と組織をリード・マネージメントすることが求められたのです。でも、それが本当に実現できたかと言うと、それはNOでした。私自身30代半ばで管理職になった頃、こういったたぐいの本を読みあさり、それを実践していました、しかし、前にも書きましたが、私は部下の気持ちを見失ってしまい、その結果、全員から辞表を出されてしまいました。

 そうなのです、プレゼンスキルを使って素晴らしい発表をしたところで、そこに心がこもっていなければ、何も伝えることができません。「感動」という言葉は、感じて動くと書きます。感じなければ、人は動かない。また、何が起こるかわからない、変化が当然のニューキャリア時代では、過去のデータだけでの分析や推論だけで未来を予測することなど不可能です。時代の半歩先を感じ取る直観が必要となります。

 そして、私の一番嫌いな言葉ですが、Give&Take 、Win&Winという意識で人と関わっていたら、信頼関係を構築することなどありえません。ポジティブ・シンキングを「落ち込まない強い人になる」ととらえる間違った解釈が横行し、落ち込む人は弱い人間、ダメ人間といったレッテルが張られ、見捨てられていきました。本来、人の精神面をサポートするはずのコーチングも、コーチングテクニックで部下を操る単なる手法として広まりました。その結果が、今の状況です。