細川馨
ビジネスコーチ(株) 代表取締役

 私はビジネスコーチングの視点から、長年組織の開発に携わってきました。この連載では、3つのステップに沿って「一致協力する組織の作り方」についてお話しします。成果を上げる組織になるためには、次の3つのステップがあると考えます。

  • Step 1 組織を率いるリーダーが自己変革する
  • Step 2 働きやすい職場をつくる
  • Step 3 一致協力して目標を達成し、成果を残す

 業績を上げ、成果を残していく組織になるためには、第1ステップとして、リーダー自身の自己変革が不可欠です。なぜなら、自分一人で仕事をするスタッフと、他人と一緒に目的達成をするリーダーでは、求められる役割がまったく違うからです。第2ステップは、リーダーが自己変革をしたならば、社員のモラールを高め、主体性を発揮できるような土壌――「働きやすい職場」を作ることです。第3ステップは、リーダーが自己変革をし続け、「働きやすい職場」ができたら、業績を上げるために、組織として一致協力し、目標を達成することです。

実績を上げるだけでは良いリーダーにはなれない

 「一致協力する組織」を作るために、何よりも大切なのがリーダーの自己変革だと話しました。2008年を表す漢字として「変」が選ばれましたが、現在は世の中がすごいスピードで変化しています。大きな成功を収めたからと言って、それが続くとは限らないのです。常に変化、変革を続けていないと、リーダーもそして組織も取り残されてしまいます。それでは、まず、「良いリーダー」とはどんな存在でしょうか?

 私と親交があるエグゼクティブコーチングの第一人者マーシャル・ゴールドスミス氏は、フォード・モーターのアラン・ムラーリー社長をはじめ、世界の大企業の100名以上のCEOをコーチングしています。彼は、日経ビジネスアソシエ2008年12月16日号のインタビューでリーダーシップについて次のように述べています。

 「リーダーシップとは、他の人とともに目的達成に向けて進むこと。『他の人とともに』という言葉が大事です。実績を残した人は、アチーバー(達成者)です。自分一人で行い、得た手柄も独り占めする。一方で、リーダーは自分ではなく、メンバーに意識を向ける。メンバーが正しく行動できるように支援するのがリーダーシップなのです。」

 リーダーは優秀で実績を残してきたからこそ、その立場にいる人ですが、とかく「自分が、自分が」と考えてしまいがちです。しかし、良いリーダーとは自分のことを考えるのではなく、組織に属するメンバーのことを考え、彼らが行動しやすくするために支援をする人であるということをしっかりと認識してください。

 昨年、自身の著作権詐欺事件で逮捕された小室哲哉氏が、保釈された際に自分のことを「裸の王様」と言いました。彼は、1990年代に数々のヒット曲を作り、1996年、1997年の長者番付で2年連続第4位になりました。自分の才能と資産を活かして、様々なことができたはずなのに、なぜこのような事件を引き起こしたのでしょうか?おそらく、彼は自分にばかりに目を向け、他人の意見に耳を傾けなかったのでしょう。そして、事業に失敗して多額の借金を抱え、このような事件を起こしたのです。

 実績を出し、成功した組織のリーダーほど、このような事態に陥る可能性が非常に高いのです。メンバーを第一に考え、メンバーから信頼される人が「良いリーダー」ということを肝に銘じてください。