細川馨
ビジネスコーチ(株) 代表取締役

 私は多くの企業で、ビジネスコーチングを活用した、経営幹部・管理職向けの研修やセミナーを行っていますが、最近とても強く実感するのが、組織の中でのリーダーの役割が以前にも増してとても大きくなっているということです。未曾有の経済危機と言われる今、リーダーとして適切な技術を身につけなければ、リーダーも、そして組織も生き残れない状況にあるのです。リーダーが職場で生き残るためにどうしたらいいのか。今回から6回に分けて、「リーダーとして生き残る技術」について、ビジネスコーチングの観点からお話ししたいと思います。

世代間の仕事に対する姿勢の変化

 「リーダーが生き残る技術」についてお話しする前に、まずは現在の職場がどのような状況にあるかということについて知っておく必要があります。今回はその点についてお話しします。

 仕事に対する姿勢が世代間で大きく異なるという話をよく耳にします。特に若い世代には仕事とプライベートをはっきりと区別し、それぞれに集中して楽しみたいという人が増えています。現在のリーダーの方たちが20代、30代でバリバリと働いていたころには、仕事が終わらなければ、週末にも会社に出てきて仕事をすることが当たり前だったでしょうし、プライベートよりも仕事を優先させる人が多かったように思います。もちろん、現在の若い人の中にもそのように「仕事一筋!」の人もいますが、今はそれがスタンダードとは言えない時代になってきているのです。

 同時に、若い人が上司に求めているものも変わってきています。少し前のことになりますが、今年3月18日に毎日コミュニケーションズが「<マイコミ内定者レポート>2009年入社予定内定者の意識調査」を発表しました。そこでは、2009年入社予定内定者が職場で上司にどんなことを望んでいるのかということが明らかになっています。

 求める上司像については、次のような結果でした。

  • ミスをしても、叱らずやさしく指導してくれる上司が欲しい 54.4%
  • ミスをしたときは、きちんと叱ってくれる上司が欲しい 45.5%

 理想の先輩像については、次のような返答でした。

  • しっかりしている人 29.4%
  • 前向きな人 24.2%
  • いつも笑顔を絶やさない人 21.3%

 この結果から、上司や先輩に「厳しさ」よりも「やさしさ」を求める傾向が強いことが分かります。また、仕事を任せてもらって主体的に行動したいという願望よりも、人間的に魅力のある上司や先輩に丁寧に指導してもらうことへの期待が強く、受け身の姿勢が浮かび上がってきます。現在のリーダーの方たちが入社したころとは、状況がかなり異なるのではないかと思います。

 このようにリーダーの方たちが新入社員だったときの仕事に対するスタンスや上司・先輩に求めていたものを、今の若い人たちに押しつけてしまうと、彼らは「ついていけない」と感じ、やる気をなくしてしまうかもしれません。自分が休日もいとわず働いていたからといって、それを部下に強要したら、部下は嫌な上司だと思うだけで、信頼を得ることはできないでしょう。部下を自分の価値観に合わせて行動させるという方法は、機能しなくなっているのです。そのギャップを認識していないリーダーが、今、職場で大きな問題を生み出しています。