30代社員の危機

 心の病を抱えている層として特に増えているのが30代です。なぜ今、30代の社員に、心の病を抱える人が増えているのでしょうか?

 私は、先にお話しした成果主義が大きな影響を及ぼしていると考えています。現在の30代は成果主義が本格的に導入された世代に当たります。先述したとおり、成果主義はうまく運用されればいい結果を生み出しますが、間違えると大きな弊害を生みます。成果主義が導入されたことにより、個人が短期的な成績を求められるようになったため、それぞれが自分の成績を上げなければならず、それに精一杯になり、先輩が後輩を指導・教育するという意識がなくなってしまったのです。

 また、成果主義とともに、裁量労働制が導入されたのも問題を大きくしました。これは抱えている仕事が終われば早く帰っていいけれど、終わらなければいつまでも帰れないという制度です。仕事ができなければ、評価を下げられ、賃金も下げられてしまうので、がむしゃらに働くことになり、疲労感が深まっていったのです。

 管理職の一歩手前である課長代理クラスの人に心の病を持つ人が集中する傾向があります。そのポジションにある人たちが成果を出すために必要なのは、上司や部下とのチームワークです。しかし、それを得られていないのです。30代は責任のある仕事をこなしていきながら、会社の将来を担っていくべき存在なのに、これが現状なのです。これは大きな問題です。

 今回はリーダーが組織で生き残る技術を身につける前提として、現在の職場が抱える問題についてお話ししました。次回はこのような職場の状況を踏まえて、生き残る技術を持たないリーダーが、職場に与える影響に焦点を当てて解説していきたいと思います。

細川 馨(ほそかわ・かおる) ビジネスコーチ株式会社 代表取締役
細川 馨

 外資系生命保険会社に入社し、支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。
 2005年にビジネスコーチを設立。エグゼクティブコーチ育成のスクールを主宰。著書に『あなたの成果が爆発的に飛躍するできる仲間の集め方』(日経BP社)、『上司は社員と飯を食え』(日経BP社)、『「右腕」を育てる実践コーチング』(日本経済新聞出版社)など。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。