以下はある企業の責任者とのやりとりです。

責任者「部長以上の全男性管理職を対象に、植田先生に講演をしていただこうと考えています。これがわが社の現状で、課題・問題はここです。今年は初年度となるわけですが、当社としてはここまでは行きたいと考えております。つきましては、先生にお願いするご講演の目的と対象はこちらで、時期的には2カ月以内、講演の時間は2時間です。ぜひ、宜しくお願いします」
「私の講演以外には何か今年やられるのですか?」
責任者「はい。男性管理職に対してはこれで、女性たちに対してはその数カ月後にこれで、下期は切り口を変えて、全社員を対象にしまして・・・」

 まだ何もスタートしていないのに、きちんとした計画が作られています。それは通常のプロジェクト管理や営業計画のように考えられているようです。そして、計画通りにつつがなく実施をし、成果を上げたいというのが願いのようです。

頭で考えた「あるべき姿」の連呼では何も響かない

「わが社としても、ダイバーシティ時代となり変わらなくてはならない。男性管理職も女性の部下の能力を引き出すことが、皆さんの業績を上げることに通じることを肝に銘じてほしい。また女性達も自分たちの意識を新たに、会社で自分の力を存分に発揮してほしい。やる気がある女性達に対してチャンスを与え、全面的に応援をしていく・・・」

 私の講演やセミナーの雨に加え、人事部長や人事担当責任者など何人もの男性達が力の入ったこのようなスピーチをします。プレゼンテーションデータに踊る「整理された図」、耳触りのいい「行動変革宣言」。私はすかさず、受講生たちの顔を見ます。男性管理職、女性達どちらも強張った顔もしくは無表情が目立ちます。会社が変わらなくてはいけない、組織が変わらなくてはならい、だから一人ひとりも変わらなくてはならないと、あるべき姿を強く訴えれば訴えるほど、逆に無機質な空間に声が響くという感じです。受験を前にした子供が母親から毎日のように勉強しろと言われて、逆に勉強する意欲がなくなり、自然に母親の言葉に耳を塞ぐ癖がついてしまったのと同じような雰囲気です。

 女性は感じる力、感受性を男性よりも使うので、このような場の雰囲気というのをさっと感じ取ります。しかし、軍隊型組織の男性は黙って聴いているのだから大丈夫と思ってしまうようで、力説している本人は何も気づいていない場合がほとんどです。