新井さんは調子が悪そうです。これを聞いた竹村さんは、以前に出た講習会の資料を持ち出し、うつ病のページを開いてみました。そこには「うつ病患者は身体の不調を訴えることが多い」とかいてあります。診断基準(表1)をみると9つの項目が書いてあり、新井さんは表1のうち、(1)抑うつ気分、(2)意欲低下、(3)食欲低下、(4)睡眠障害、(5)精神運動抑制、(6)全身倦怠感、(7)集中困難、(8)自責感の8つが相当するように思われました。

 竹村さんは新井さんに対して「今、体調も良くないみたいだし、仕事の重圧から辞めたいと思っているみたいだけど、精神的にも疲れているんじゃないかな。できれば、専門家のアドバイスを受けたほうがいいよ」と穏やかに伝えてみました。

 これを聞いた新井さんは、「自分では、仕事で疲れているだけだと思ったんだけど、精神面の問題もあるのかな?でも、精神科は心の弱い人が行く所じゃないの?」と不安そうに訴えます。竹村さんは「僕も詳しいわけじゃないけど、友達でメンタルクリニックの先生に診てもらったらとても元気になった人がいたよ」と答えたところ、新井さんは「じゃあ、一度行ってみるか」と、しぶしぶ応じました。

診断結果はうつ病

 1週間後、新井さんは妻と共にメンタルクリニックを受診し、精神科の先生に今までの経緯を話しました。すると、先生は「診断はうつ病ですね。新井さん、頑張りすぎたんですよ。脳が疲れきっているんです。昇進した時などによくありますよ。必ず良くなりますから、薬を飲んで、しばらく自宅で休んでください」との説明を受けました。

 新井さんは先生に「身体も動くのに家で休むのですか。じっとしていることが辛いし、私には会社に対する責任があります」と訴えました。

 先生は新井さんに対し、「新井さん。私がお伝えしたいのは、新井さんが最も早く復帰する方法として休むことを勧めているのです。このまま会社に行き続けると、最悪の場合自殺してしまうこともあります。今は、ゆっくりと休んでください」と優しく語りかけます。一緒に聞いていた妻も「あなた、先生の言う通りだと思うわ。今までは頑張ってほしいと思っていたけど、ゆっくり休んでから今後のことを考えましょう」と涙ぐみながら話していました。