リップシャッツ 信元 夏代
アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役

 今や企業にとって、リスクマネジメントや法令順守などの「企業としての責任」を果たすのは当たり前。最近ではそれ超えて、世界が直面するあらゆる社会的課題に取り組み、企業活動を通して課題の解決、そして社会貢献をしていくことが、市場から強く求められている。そんな活動が社員のエンゲージメント向上とスキルアップに繋がっている事例がある。米国・ボストンの地ビール会社、The Boston Beer Companyの主力商品であるサミュエル・アダムスのブランドチームが地域社会で展開しているスキル活用型ボランティアプログラムがそれだ。

社会的意識の高い会社は社員エンゲージメントも高い

「69%のアメリカ市民は勤務先を選ぶ際に、その企業が社会貢献などにコミットしているかどうかを基準に検討する」

 これは、ボストンに本社を置く社会的マーケティング・エージェンシーのコーンインクが2010年9月に発表した”2010 Cone Cause Evolution Study”による回答結果である。また、「93%の人々は、自分が勤める会社の企業理念を誇りに思っている」と答え、「内92%は、社会貢献マインドの強い企業理念があるからこそ会社へのロイヤリティーを感じる」と回答している。

 一般消費者の意識も呼応している。「約85%が、社会的課題に取り組む企業に対しては、そうでない企業に比べてよりポジティブな印象を受け、故に、同様の商品を見かけたら社会的課題に取り組む企業の商品を優先して購入したい」と回答している。

 冒頭に述べた、今日の企業を取り巻く環境の根拠はここにある。つまり、世界が直面するあらゆる社会的課題に向けて企業活動を通して課題の解決、及び社会貢献をしていくことは、市場から強く求められているだけでなく、優秀な社員のエンゲージメントを高めていくためにも必要不可欠な戦略となっているのだ。もはや企業にとって社会的課題への取り組みは、「Nice to do(やった方が良いこと)」ではなく、「MUST(必須)条件」となっているといえよう。

 しかし一言で「社会的課題に取り組む」といっても、たいそう大掛かりな仕組みを構築する必要は必ずしもない。自社の理念に立ち返り、自社ならではのコンピテンシーを最大限に引き出すことで、自社らしい取り組みを進めていくことができるはずだ。

 そこで紹介するのが、ボストンの地ビール会社であるThe Boston Beer Companyのサミュエル・アダムス・ブランドチームの取り組みである。