リップシャッツ 信元 夏代
アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役

 新興国台頭による更なる市場拡大の可能性、クロスボーダーのM&Aの活発化、働き方の多様化、マイノリティーの登用 ―― などなど、多くの企業はすでに多様性に富んだ企業環境におかれている。もはや「ダイバーシティ・マネジメント」は単なる人材戦略ではなく、企業経営戦略なのである。しかし、このような多様な環境を、事業パフォーマンスやイノベーションなどの具体的成果につなげていくために「活かし」、効果的に「管理・経営」できているだろうか。

 後編の今回は、グローバル日系企業にとって差し迫った問題である、異文化経営におけるダイバーシティにまつわる諸問題について詳しく見ていきたい。

文化的多様性のメリットとデメリット

 海外からの赴任社員や外国人社員の受け入れなどによって構成される“異文化チーム”の特徴は、チームのプロセスがうまくいくと大きな生産性を生む潜在能力を秘めているが、半面、うまくいかないと全く効果を上げないという大きなリスクもある、という点だ。

 異文化チームのメリットは、「メンバーのバックグラウンドの多様性から生じるアイデアの豊富さ、視点の幅広さ」であろう。問題の捉え方や解決策の創出法、選択肢の洗い出しから評価、意思決定プロセス、プラン実行などのあらゆるビジネスプロセスの局面において、ゼロベースでの検討が可能になる。チームの多様性のおかげで、偏った意見にグループ全体が賛同してしまうといった“集団思考の罠”に陥ることがない。しかし、このようなメリットが効果を発揮するのは、プロセスがうまく管理され、チームとして効果的に機能している場合、という条件つきである。ハイパフォーマンス・チームの作り方については後日、本コラムで紹介していく。

 異文化特有のデメリットとしては、国の文化に付随する先入観にとらわれて、メンバーやその人の意見に対する認識に偏りが生じる可能性があること。また、外国語によるコミュニケーション、あるいは通訳を介するコミュニケーションは、通常の状態よりも不自由であるためにストレスや誤解を生みやすく、信頼関係が醸成されるプロセスを阻害しやすい。