過酷な状態の中でリーダーの存在があり、多数決という合意形成手段を用いてルールを作り、見事に統制されていた組織が目に映ります。今後、回顧録が出版されることで、紆余曲折のあった事実もでてくることでしょう。しかし、33人が全員無事にそして元気に救出された事実は、リーダーの存在とルールの厳格な適用があったからこそ、実現できたと言って良いと思います。

 「組織における統率力を持ったリーダーの存在」、「ルールの厳格な適用」が組織の維持に必要だということを改めて考えさせられた出来事でした。

「はやぶさ」に学ぶリスク対策

 二つの目の「還」は、小惑星探査機「はやぶさ」の奇跡の帰還。

 2010年6月13日小惑星探査機「はやぶさ」は、2003年5月に打ち上げられて以来、60億kmの旅を終え、奇跡的に帰還しました。「はやぶさ」の様子は、ウィキペディアに詳しく紹介されているので参考になります。(ウィキペディア はやぶさ で検索)

 何度も通信不能になった無人の探査機が、まるで意思を持ったかのように地球に帰還できたこと。そこには実に多くの日本人技術者が叡智を結集して達成した出来事だと知り、感動せずにはいられませんでした。

 帰還できた要因は、幾つもの要素が重なっているようです。

  • 火星探査機「のぞみ」の失敗を踏まえ、一見過剰とも思える推進剤「キセノンガス」の搭載が幾多のトラブルから救ったこと
  • 不具合が確認された2005年12月に当初の計画「2007年6月帰還」を変更し、2010年6月に再設定したこと。この3年間で回復できると確信するプログラムをはやぶさに内蔵していたのです
  • 幾多のトラブルに対して、冷静にそして必ず帰還させるという信念を持って、技術者の叡智が結集したこと

 過去の失敗の経験から、リスクの「予防対策」として上記の一番目があり、リスクが発生した際の「発生時対策」を上記の2番目のように組み込んでいたこと。そして最後は「技術者の信念」、まさにリスク対策の模範となる行動です。

 「はやぶさ」プロジェクトに携わった企業を見ると、日本の主要企業が数多く連なり、日本人技術者の叡智が結集していることが良く分かります。短期的な利益を求めるのでなく、純粋に宇宙開発、未知を解き明かすために結束した姿がそこには映ります。

 帰還しただけでも大きなニュースでしたが、最後に大きなご褒美もいただきました。サンプル容器から回収された岩石質微粒子のほぼすべてが地球外物質であり、イトカワ由来と判断されたことです。この微粒子が、今後の分析技術の進歩により多くの発見をもたらす可能性を残しました。

 奇跡の帰還を果たした「はやぶさ」は、世界初の記録を数々残しました。

  • マイクロ波放電型イオンエンジンの運用
  • 宇宙用リチウムイオン二次電池の運用
  • 地球と月以外の天体からの離陸
  • 宇宙機の故障したエンジン2基を組み合わせて1基分の推力を確保
  • 化学エンジンを全く使用せずに惑星間航行(イトカワ→地球)の完遂
  • 月以外の天体からの地球帰還(固体表面への着陸を伴う天体間往復航行)
  • 月以外の天体の固体表面からのサンプルリターン