翌日、新井さんと妻は散歩に出かけることに。頬に当たる風が涼しく感じるなか、二人は並んで慣れ親しんだ家の周りを歩き始めました。近所の家に植えられているもみじの赤い葉が新井さんの目に美しく感じられます。医師から指示された15分の散歩はあっという間に終わってしまいました。

 「どう、疲れなかった?」と心配する妻に、「今日は大丈夫。疲れなかったよ」と答え、風呂に向かいます。風呂に入り、湯船に浸かっていると、今日歩いた道の景色、木々の様子が思いだされてゆったりとした気持ちが広がります。夕食も美味しく食べることができました。

あせらず、ゆっくり活動範囲を広げる

 夕食のあとリビングでくつろぐ新井さんは、妻にしみじみと語りかけます。

「今日は疲れずに散歩にできてよかった。それと、紅葉がこんなにきれいに感じたのは久しぶりだな。気持ちが良かったよ。温泉に行ったときにはこんなにきれいに感じなかった」
「そうなの?温泉地の紅葉はとてもきれいだったのよ。それにも気がつかないぐらい疲れていたのね」
「そんなものなのかなぁ」

 新井さんと妻は医師の指示通り15分間の散歩を1週間続けましたが、特に疲れが出ることはありませんでした。それどころか、週の終わりごろには1週間前にも増してさらに気力が充実してきました。睡眠、食欲も問題ありません。

 翌週の外来で1週間の経過を医師に報告すると、次の指示を受けました。

「新井さん、良かったですね。症状は良くなっています。今週は散歩の時間を30分程度まで伸ばしても大丈夫でしょう。それで問題なければ、来週はもっと活動範囲を広げられますよ。休職の期間は3カ月よりも少し伸びそうですが、せっかくここまで来たのですから、あせらずに今のペースで続けましょう」
「ありがとうございます。なんだか先が見えてきたような気がします」

 新井さんと妻はほっとして外来を後にしました。