席に戻ると、隣に座っていた女性が慌てて立ち上がって、私に頭を下げた。

「おはようございます。あの、新しく入られた方ですよね? 派遣の平田と申します。よろしくお願いします」

 丁寧に挨拶され、私の方が恐縮してしまう。

「いえ、こちらこそよろしくお願いします。元谷です」
「専門的なことはあれですけど、私、こちらに派遣されて3年なので、手続き関係とか分からないことがあったら、なんでも聞いてくださいね」
「そうなんですか、助かります」
「美味しいランチのお店も知ってますから」
「わー、ぜひ教えてください」

ウケ狙いの自己紹介をしたものの…

 平田さんは永塚さんと同世代だろうか。事務の制服が似合う30代のにこやかな女性だ。相談しやすそうな人が隣でよかった。永塚さんは厳しい感じの人で、くだらないことを聞いたら怒られそうな雰囲気なのだ。

「そろそろ朝礼の時間ですよ。部長のところに行きましょう」
「はい」

 平田さんに促され部長の席に向かうと、岩松課長、永塚さんが既に集まっていた。

「おはようございます。では、朝礼を始めます。まず、今日から配属になった新人を紹介します」

 部長はそういって手招きし、私は部長の隣に進み出た。

「こちらが新人の元谷さんです。自己紹介をどうぞ」
「新人の元谷由美子です。明立大学の経営学部出身です。学生時代は居酒屋のバイトに明け暮れていました。特技は中ジョッキを一度に11個運べることです。あ、あんまり仕事に関係なかったですね…。ええっと、大学で勉強したことが仕事でいかせればと思って、バックオフィスへの配属を希望しました。人材開発部ということで、社員の皆さんのスキルアップに少しでも役に立てたらいいなと思っています。色々と至らない点があると思いますが、どうぞよろしくお願いします」

 特技を言ったあたりで、平田さんが笑ったような気がする。ウケ狙いの特技だから、笑ってくれた方が嬉しいんですけど…。むしろ呆れられてしまったかもしれない。出だしから失敗したかもと思いながら、お辞儀をした。