「じゃあ、こちらからも簡単に自己紹介を…。私は部長の倉持です。新人研修で色々話をしたので、私のことはいいでしょう」

 部長は私の動揺には気づいていないようで、隣の課長に自己紹介を促した。

「課長の岩松です。直属の上司になるからよろしくね。一緒に仕事をがんばっていきましょう」
「永塚です。新人研修を担当していたので知ってると思うけど。よろしくお願いします」
「派遣の平田です。女性が増えて嬉しいです。よろしくお願いします」
「これで人材開発部のメンバー全員です。元谷くんという若い力を加えて、5名という小さな部署ですが、全社員1500人の能力を引き出していくために計画的に仕事を進めていきたいと思います。普段の朝礼では、その日の研修や業務について共有しています。今日は研修がありませんが、他に共有しておきたいことがある人は? では、平田さん以外は今後の業務体制について打ち合わせたいので、会議室に移動しましょう」

 部長から部の役割や大まかな研修スケジュールなどについて説明を受け、初めての会議は1時間ほどで終わった。

会社ってずいぶん色々な研修があるんだ

 なんでもうちの部ができたのは、2年前に始まった“サスティナブル改革プラン”によって、全社の戦略的人材育成を担っていく部門が必要だということになったからだそうだ。それまで社員教育の主体は工場に付属する教育訓練部が担っていた。そこから、全社の戦略的人材育成のための部門として独立させたのだという。ただし工場にはまだ教育訓練部が残っていて、そちらはそちらで工場に勤務する人達を対象に導入研修やQC(Quality Control)活動を支援する研修を続けている。

 似たような部門が二つもある理由はよく分からないけれど、取りあえずうちの人材開発部は全社を対象としているみたいだ。この辺はメモを取っていたものの、分からないことがたくさんあった。

 驚いたのは、自分が受けた新人研修の他にもずいぶん色々な研修があって、だいたいの実施時期と予算が決まっているということ。学校を卒業したら座って勉強みたいなことはしなくていいと思っていたけれど、そうではないみたいだ。新任課長研修、新任部長研修といった階層別だけでなく、職種別の研修や、カフェテリア方式と呼ばれる希望者が自由に選んで受講できる研修が何種類も用意されている。業務に関連する資格取得を目的とした講座なども外部と提携しているそうだ。

 岩松課長と永塚さんは、色々な研修のメイン担当者として準備や運営を行っていて、部長はそれらを統括している。平田さんは、受講者の宿泊、交通、食事、資料の準備、外注先への支払などの社内手続きを一手に引き受けている。最近は研修の数が増えて担当者が足りないそうで、「早く一人前になってもらえると助かるなぁ」と岩松課長に言われた。今年は去年よりもさらに研修の数が増えるらしい。