私はしばらくの間、主に永塚さんにくっついて、研修の準備や運営についての仕事を手伝いながら教わることになるそうだ。他には、平田さんから社内手続きなどを教わって、一通りできるようにすること。覚えることが一杯あるなぁ。永塚さんが厳しいのは新人研修で体験済みだから、うっかりミスとかしないように気をつけなきゃ。

 それから毎日、私は永塚さんの後をついてまわり、言われるがままに机を並べたり、コピーを取ったりして雑用をこなす日々が続いている。永塚さんはあまり無駄なことを言わないから、仕事の指示は明確で分かりやすい。社内電話の受け答えにも慣れてきた。

 倉持部長は偉い人と会議をしていることが多く、岩松課長は別の研修に忙しそうだ。平田さんはたくさんの電話やメールや書類を黙々と処理している。私は、そんな忙しい周りの人達の足手まといにならないよう精一杯といったところ。

 ゴールデンウィークも明け、上着もいらない過ごしやすい季節になっていた。

ニューリーダー研修のサブ担当に

「元谷さん、ちょっといい?」
「はい」

 永塚さんは分厚いファイルを手に、部屋の端にあるミーティングスペースを指した。私はノートを持って、永塚さんの後を追った。

「仕事は少し慣れてきた?」
「そうですね。永塚さんに指示されたことは、平田さんに聞かないでもなんとかできるようになって来たかと…」

 配属された最初の週は、コピーを取るのでさえ、平田さんに聞きながらでないと仕事ができなかったけれど、最近は単純作業ならなんとかできるようになってきた…と、自分では思っている。

「そろそろうちの部の役割を、俯瞰的に理解させてほしいと課長に言われてね。来月から僕が担当する第3期ニューリーダー研修が始まるんだけど、元谷さんにはサブ担当になってもらうよ。人材開発部の全体像が見える研修だから、色々と勉強になると思う」
「人材開発部の全体像が見える研修ですか。なんか、すごい感じですね。講師は永塚さんがやるんですか?」
「いや。僕は新人研修でずいぶん講師をやったけれど、今回は複数の外部講師にお願いしている。それに、うちの部の仕事は講師をやることだけじゃないよ」
「え? 違うんですか?」