倉持部長とか岩松課長とか、研修に入っているときは講師をやってるのかと思っていた。それも違うのかな? だとしたら、何をやっているんだろう。

「おいおい分かってくると思うけれど。ところで、うちの部が会社から期待されている役割ってなんだと思う?」
「…。研修をやること、だけじゃないってことですよね」

 永塚さんがうなずく。私はメモを取っていた手を休めて考え込んだ。

「ちょっとニューリーダー研修について説明するから、うちの部の役割という観点についても考えながら聞いてほしい。配属された日の会議で、倉持部長がこの研修の名前を出したんだけど覚えてる?」

キモいり…?の研修

 覚えていなかったので慌ててノートをめくると、ちゃんとメモがあった。

「若手から次世代を担うリーダーを育成する、という研修でしたっけ」
「そう、それ。若手といっても、入社5年から10年くらい、年齢的には30歳代が中心だ。これはサスティナブル改革プランの一環で始まった肝いりの研修なんだよ」
「キモいり…?」

 キモいりってなんだろう。料理の名前とは違うみたいだし。首をかしげた私に、永塚さんが説明を続ける。

「専務からの熱い要望があって、特別の予算がついた研修なんだ。全国の支店や工場から自薦・他薦のメンバーが集まる。毎月一度の合宿が5回行われ、サスティナブル改革プランに基づいた具体策を立案する。研修の最後には社長や専務もお呼びしてプレゼンテーションを行う」
「合宿を5回ですか? ずいぶん大掛かりですね」
「うん。最後は社長の前で発表しなくてはならないから、受講者のプレッシャーも大きい。企画する我々も1日や2日の研修とは異なる点が多いから、気を使ったり、受講者の状況や要望にあわせて柔軟な対応をしなくてはならない。なかなか大変なんだよ」
「なるほど」
「ようやく今年度の受講者が決まった。自薦も他薦もあって定員を超えてしまったから、部門間の調整や面接をしたりして、色々なタイプのメンバーが集まるように絞り込んだ」

 永塚さんは名簿を取り出した。受講者は30名で、全国の支店や工場といった様々な部署名が所属として書かれている。期間の長さもさることながら、受講者を集めるだけでも大変そうな研修だ。

「これがニューリーダー研修の企画書だ」

 パワーポイントを印刷した書類を渡された。