私はさっそく座席表作りに取り掛かった。

 まずは、どの会議室を使うかを確認しよう。会議室の予約システムを開くと、すでにニューリーダー研修の1回から5回まで予約は済んでいた。5カ月も先だけれど、他にも予約されている会議室がある。みんな、ずいぶん早くから会議室を予約しているなぁ。

 この研修のために予約されていた会議室は、普段はロの字に机が並んでいるけれど、島型と呼ばれるグループワーク向けの配置がいいかな。平田さんも島にしたと言ってたし、新人研修もずっとこの形だったから。パソコン上で、2人掛けの机を3つ使った島を5個描いた。そこに第3期の名簿を五十音順に当てはめ、席を決めていく。講師の方の机は前にあるし、アテンドとして立会いをする永塚さんと私の席は後ろのあたり。プロジェクターと、スクリーン、ホワイトボードは、会議室の前にいつも置いてあるから、そのままでいいだろう。

座席表を作ってはみたが…

 私はできあがった座席表をプリントアウトし、永塚さんが打合せから戻ってくるのを待った。

 分厚いファイルは、中々読み進められない。少し飽きてしまったので、昨年のニューリーダー研修の最終プレゼンテーションが録画されたDVDでも見てみようという気になった。ニューリーダー研修の最後は、全社に向けた提言をプレゼンテーションすることだ。それが経営層の目に止まったら、全社でそれを遂行していくことになる可能性もあるらしい。

 DVDを再生してみると、受講者が皆、難しい顔をしながらプレゼンしていた。しかし、そこで取り上げられている我が社のことさえ、新入社員の私にはイメージできない。当然のことながらその他の中身もほとんど理解できなかった。それを入社式でお目にかかったことのある社長、専務、倉持部長といったお偉方が聞いていた。

 何チームかプレゼンテーションが終わると、ようやく永塚さんの登場だ。見てみたかったのは、これですよ。今より少しだけ若い永塚さんが、緊張した面持ちでプレゼンしている。そしてその後の討議では、専務が早口で次々と質問を投げかけ、永塚さんはそれを冷静に答えていく。さすが、という感じだ。でも、見ているだけでなんだかこっちまで疲れちゃうよ。こんな偉い人に容赦のないツッコミをされたら、私だったらともかく謝ってしまうだろう。まともな受け答えなんかできない。

 最終的に専務は「よし、分かった。永塚、来年はお前がやってみろ」と言い、永塚さんが「精一杯やらせていただきます」と頭を下げた。

「ふう」

 白熱した議論の結末に、思わず声が漏れてしまったようだ。

「元谷さん?」
「あっ、永塚さんお帰りなさい」

 私は顔を上げて、イヤフォンを外した。イヤフォンで音を聞いていたから、永塚さんが席に戻っていたことに気づいていなかったのだ。DVDを止め、さっき作った座席表を手に取って、永塚さんの席の方に回る。

「永塚さん、ちょっと確認をお願いしたいことがあるんですけど、今、よろしいですか?」
「なんだ?」
「来週のニューリーダー研修の座席表を作ってみたんですけど、こんなのでどうでしょう?」

 座席表を永塚さんに渡す。

「え、何これ?」
「座席表です…けど…」
「それは分かるけど。…渡した資料、ちゃんと読んだか。ちょっと2期と3期のファイル持ってきて」
「はい…」