休憩の後、受講者の皆さんはすっかりリフレッシュしたようで、SWOT分析に取り組んでいた。今川先生がホワイトボードに受講者の発表をまとめていると、永塚さんが途中で前の方に行き、何かを渡した。何を渡したんだろうと思ったら、それはホワイトボード用のペンだった。永塚さんが隣の席に戻ってくる。

そんなに細かく色々あるの

「どうかしました?」
「ペンがかすれてる」
「あの、事前にペンは書けるか確認しましたけど…」
「あれは書けているとは言えない。かすれて読みにくい」
「あのくらいで? もったいなくないですか?」
「みんながキチンと読めなきゃ意味がないだろ。ペンは書くための道具だが、ここでは皆に読んでもらうためにホワイトボードに書いている。読めることの方が大事だ。長く書いているとかすれてきたりするから、必ず予備を用意しておくこと。いいね」
「はい…次は注意します」
「来月は、先生との打合せにも同席してもらって、もっと受講者の学びをサポートする仕事をお願いしようと思ってるから、しっかりな」

 研修の準備やアテンドって、こんなに細かく色々やらなきゃいけないのか。一つひとつの仕事がきちんとできていないのに、どんどん仕事が増えていくよ。

 今川先生がプロジェクターのスイッチを入れたので、私は慌てて電気を消すために立ち上がった。

 なんとかその日の研修が終わり、夕方の懇親会となった。受講者の方々に手伝ってもらって机を並べ替え、頼んでおいたケータリングのオードブルやお寿司、お酒などを並べる。簡単な立食パーティーみたいな感じだ。そこへ小谷専務が登場し、受講者へのねぎらいと期待を語ってから、乾杯の音頭を取られた。私も一緒に乾杯をしたのだが、落ち着く間もなく、あちこちお酒を注いで回ることになった。

「元谷さ~ん、こっちビール足りないんだけど」
「はーい、よろこんで!!」

 慌てて瓶ビールを2本つかんで飛んでいくと、皆に笑われた。

「よろこんで、って居酒屋じゃないんだからさぁ」
「…学生の頃、バイトしてたのが出ちゃいました。瓶ビールを注ぐのは慣れないので、ビアサーバが欲しいです」

 またもや沸き起こる笑い。さらにあちこちからビールだの日本酒だのと声がかけられ、私は半ばヤケになりながら、ひとりでオーダーに対応していた。小谷専務は受講者の方々に混ざって、色々と話をされている。皆も次第に盛り上がって、あちこちで話の輪ができていた。

「ちょっと、元谷さん」
「はい、よろこんで!」
「昼間よりイキイキしてるみたいだけど、張り切りすぎるなよ。明日もあるんだぞ」

 調子に乗っていたら、呆れ顔の永塚さんにそう言われてしまった。そうだ、ここは居酒屋じゃなくて、会議室だった。