人材データを管理するシステムが、人事部のシステムに留まっている

 以下は、ある大手企業の事業部の方から伺った話です。

「事業部に属する社員の情報は、月に一回、全社人事からExcelファイルで送られてきます。そこにあるのは、所属組織、等級、役職といった基本的な情報です。それ以上の情報を入手しようと思うと、申請書を作成して上司の承認を得る必要があります。申請書提出からデータの入手まで、2~3日はかかります」

 確かに、毎月最新の人事情報が手に入る環境はあるものの、Excelファイルベースなので、一人ひとりの履歴を時系列に並べることが難しいという難点があります。結果、その月々のスナップショットを確認するに留まってしまっているといいます。欲しい情報は、数日待たなければ手には入りません。現場マネジメントに必要な、個人の強み・弱み、スキルや経験の情報がタイムリーに入手しにくいだけではなく、データとして揃っていないことも珍しくないとか。そこで、事業部で人材データベースを構築できないか、ということで弊社に声をかけてこられたわけです。

 多少異なる点はあるものの、こうした話を複数の方から伺いました。どうやら決して珍しい話ではないようです。お話を伺った方々の企業では、もれなく「人事情報システム」が導入されてしました。しかし、それは現場の人材マネジメントに活用されていない、という実態が見えてきます。

 では何故、このようなことが起きてしまっているのでしょうか?

 「システム」という観点からみると、

【人材データを管理するシステムが、「人事部のシステム」と認識され、そこに留まっている】

ということが大きな原因のひとつだと考えられます。そして、そのことが、

(1) 人材の情報が散在していて、一元管理できていない
(2) 人材マネジメントに関わる人が必要とするピード感と表現力がない
(3) 「分析」「仮説検証」という視点が弱い

というシステムの弱点を生み出しているのです。ひとつひとつ説明していきます。

(1) 人材の情報が散在していて、一元管理ができていない。

 人事情報システムを「人事部のシステム」とだけ考えてしまった場合、そこに集めるデータは、どうしても「人事部で必要なデータ」のみとなってしまいます。しかし、「人に関するデータすべて」、「現場の人材マネジメントに必要なデータ」、と視点を変えてみると、まったく別の領域・異なった種類のデータ(例えば、スキル情報、特性検査、従業員アンケート、営業数字、会計情報等々)も必要になることがみえてきます。この認識のギャップが、せっかく「人材データ」を格納する箱を持ちながら、人材データを包括することができていない理由のひとつとなっています。

(2) 人材マネジメントに関わる人が必要とするスピード感と表現力がない

 日々の人材マネジメントは現場で行われています。ビジネスを動かしている現場のスピード感からすれば、申請書を上げてからデータを入手するまでに3日近くかかるというのはあまりに遅い。現場は、今、目の前にある課題や問題に、すぐに取り組みたいはずです。

 また、上記の(1)とも関わりますが、「人事部のシステム」という発想でいると、現場がデータを何のために使用するのかという視点を持てず、ただ生のデータを渡すだけ、になっていることも珍しくありません。

(3) 「分析」「仮説検証」という視点が弱い

 マネジメントの質を上げていくためには、仮説検証、PDCAサイクルを繰り返していくことが重要となります。しかし「人事部のシステム」とだけ考えてしまったとき、どうしても「業務効率の向上(正確性、安定性の向上支援」に力点が置かれてしまいます。そこに留まってしまうと、「分析」「仮説検証」という面がなおざりになってしまい、人材マネジメントの質を上げるというタスクを持っている人たちにとって、使えないシステムとなってしまいます。

 全社人事のシステムがこのような状況に陥ってしまっているので、事業部のマネジメント層が、弊社のような人材データベースの構築の専門家の門をたたくのだと考えています。