永塚さんはまだ会議室に来ておらず、私は中間課題のプリントアウトを読みながら待つことにした。目を通し終わるころ、永塚さんがやってきた。私は永塚さんが席に着くよりも早く立ち上がり、自己申告した。

「すみません、永塚さん。ヤバイです」

 こういうのは、先に謝った方がいい。永塚さんから新人研修中にしごかれた経験上、よく知っている。

「は?元谷さん、それ、報告のつもり?」

 し、しまった・・・。違う地雷を踏んじゃったよ。

「いや、あの、その」

 新人研修で報・連・相というのをやった。私は必死で報告の定義を思いだそうと頭をフル回転させる。確か・・・。指示されたことに対して結果の事実を伝えること・・・だったように思う。

あるべき状態と現状を比較すれば一目瞭然

「昨日が締切のニューリーダー研修の中間課題についてご報告します。4チーム中、昨日の業務時間内の提出数はゼロ、今朝になって2チームです。それから残りのチームに連絡を取り、1つは途中の状態ということでしたが送ってもらいました。最後の1チームは、リーダーが出張中で連絡が取れず、他のメンバーはリーダーに任せているから分からないとのことです。こちらが、回収した課題のプリントアウトです」

 どのチームもパワーポイントで5~6ページである。2面付けの両面でプリントアウトしたら、2枚くらいにしかならない。ペラペラである。

「前回の研修の最後に、締切について伝えた以外に、何か督促はしたのか?」
「はい。1週間前に全員に宛てたリマインドのメールを出しました。それから、昨日もう一度。今日は未提出の人に電話をしています」
「督促は十分だな。しかし、提出してくれたといっても、なんだか薄いな」

 永塚さんはプリントアウトを手に取って、全体を流し読みした。あっという間に目を通し終えてしまった。

「元谷さん、この中間課題のあるべき状態って、どんなだと思う?」
「第3回の研修では、提言へ向けたテーマ内容の討議が中心ですから、その討議が十分にできるように準備をすることだと思います。・・・今、提出されている内容は、討議の材料としては不足しているのではないでしょうか」

 永塚さんがうなずく。私は続けて言った。

「永塚さん、私、変だと思うんです。だって、ニューリーダー研修でしょう。うちの会社の次の時代を担う優秀な人たちの選抜研修ですよね。確かにチームリーダーは決めましたけど、受講者一人ひとりが、もっと自主的に動いてくれるものじゃないんでしょうか?」
「もっとみんなが自主的に動くべき、か・・・。当然だな。この中間課題には、いくつか問題がある」