私が受講者へヒアリングを行う一方、永塚さんは今川先生に電話でヒアリングをしていた。二人の情報を合わせた結果、研修の趣旨などのメッセージが正しく伝わっていないことが原因のひとつではないかということになった。そこで研修での対応を、次のようにすることにした。

 まず、今川先生に小谷専務が話す時間を調整してもらい、小谷専務から、研修の趣旨と受講者への期待、提言の取り扱いについてご説明をいただく。永塚さんや、うちの倉持部長に説明してもらうことも検討したけれど、やはり小谷専務からきちんとした形で伝えてもらうことで、受講者に喝が入るだろう。そして、今川先生からは、チーム活動の進め方について復習と徹底をお願いする。研修の最終日となるプレゼンテーションの日にちは決まっている。逆算して、いつまでに何をすべきか、TO DOと役割分担を明確にした資料を受講者に作らせ、提出してもらうことにした。

研修がうまいくということ

 月1回の人材開発部の定例会で、永塚さんはニューリーダー研修の現状に関する報告を行った。私と打ち合わせた内容を資料にしたものが配られた。対応策について手配が終わったことを報告すると、倉持部長から「小谷専務にはご面倒をおかけすることになるから、私からもお願いしておきましょう。引き続き、受講者へのきめ細かいフォローをお願いします」とご意見をいただいた。

 研修がうまくいくって大変だなぁ。

 私には、なんとなくしか理解できていなかった「あるべき姿」が、永塚さんには明確に見えていたのだろう。それが明確だからこそ、ズレがすぐ見つかる。そうしたら手間を惜しまず、現場に戻って原因を探す。地道な繰り返しだ。

 研修は手段にしかすぎない。会社の戦略遂行を助け、現場の役に立つものでなくてはならない。研修を実施することや、参加することだけが目的になったら、本末転倒だ。きっと、この研修はうまくいく。だって、永塚さんが担当なんだから。私も見ているだけのサブ担当から、メイン担当の永塚さんをサポートできるようになってきてる気がするし。私は会議中なのに、もうニューリーダー研修がうまく軌道に乗るような錯覚を感じていた。

 そのとき、突然会議室のドアが開いた。