船見真鈴
マイカ ヒューマンラボ 代表取締役

 先日カウンセリングをした30代の男性の話をしましょう。カウンセリングルームに入ってきた彼は、顔色も優れず、見るからに疲弊していました。イラッとした表情で椅子に座った彼に「お疲れのご様子ですね」と声をかけると、やおら組織への不満を訴え始めました。

「自分が不調なのは組織の体制のせいだ。体制が改善されない限り体調がよくなることはないだろう」

 男性はこう主張します。最近増えている非定型うつのパターンだろうか?と思いながら話を聴き進めていくと、彼が抱えるある“事情”が見えてきました。

自分ひとりで頑張るしかない

 実は、お兄さんが難病にかかり、彼は連日、その介護に追われていたのです。お兄さんは家で闘病しているため、平日の終業後はまっすぐ帰宅。看病や家事をして一日が終わってしまいます。土日も家を離れることができず、なおかつ定期的に病院やリハビリ施設に通わせなければなりません。

 仕事も脂が乗りはじめる年代で、結婚もこれからという彼が、そのような大変な状況に置かれていることに胸が痛みました。介護を頑張っていること、仕事を休まずにこなしていることをねぎらいながらも、私の頭の中にはあるひとことが浮かんできました。

「どうしてひとりで頑張っているの?」

 というのも、彼はお兄さんの介護をひとりでやっているというのです。親も兄弟もいるのに、です。しかも誰にも愚痴や弱音を吐いていないといいます。頭に浮かんだそのひとことを声に出して伝えると、こんな答えが返ってきました。

「両親は高齢ですし、兄弟は所帯を持っていますから。自由に動けるのは僕だけなんです。僕がやるしかありません」

 頑張り屋さんだと感心したくなりますが、現実は彼ひとりで抱えられる範疇を超えています。それに何よりも、ストレスをたくさんためこんでいることが大きな問題です。イライラや不満感といった心の症状だけでなく、肩こり、胃痛、食欲不振など体にもあちこちにもストレス反応が出ていました。このままでは病気になる可能性がふくらむばかりです。ただちに行動に介入する必要があると判断しました。