「マーケティングとは何か?」ということについては、大学の授業ではいくつかの定義を教わった記憶がある。だが、それは授業の中での話で、一般的にマーケティングといった場合、市場調査や広告・宣伝や販売促進など幅広いイメージを持たれていることが多い。「うちの会社の営業担当者に不足しているマーケティングセンス」といわれても、具体的に絞り込むことができない。

現場・現物・現実だ」という言葉を思い出す

「具体的にどういったことに対するセンスなのか、ちょっと分かりません。営業担当の方々がどんな業務の進め方をされているか、私が分かっていない部分もありますし…」
「そうですね。この前の会議で、元谷さんには営業企画部へのヒアリングをお願いしましたが、彼らは営業が何をやっているかよく知っています。会社の人材育成のための戦略は私や専務などで考えることになりますが、研修の目標については現場の意見も参考にしなくてはなりません」
「営業企画部へのヒアリング事項は、マーケティング研修への要望だけでなく、営業活動の現状についても含まれるということですね」
「はい。目標は達成度合いを測定できることが重要です。そのためには具体的である必要性があります」
「具体的な目標を立てるためには、現場を知る必要があるってことですね」

 部長は無言でうなずいてくれた。私は永塚さんの「現場・現物・現実だ」という言葉を思い出していた。

「明日、営業企画の寺崎さんにヒアリングをお願いしてあります。他には、何か伺っておくことはありますか?」
「専務のお話では、営業企画から話が始まったようなことをおっしゃっていました。そのあたりの経緯についても可能な範囲で聞いてきてください。今週中に報告をもらえますか?」
「今までの経緯も聞いて、今週中にご報告します」

 私はインタビューの項目と締切をノートに書き込んだ。

 営業企画部の寺崎さんは、ニューリーダー研修の進捗が思わしくなかったときに、ヒアリングに応じてくれた人だ。マーケティング研修の企画について、営業企画の誰にヒアリングをお願いすればいいのかを相談したら、「部長は忙しいから、僕が対応します」といってくれた。またお世話になってしまうけれど、寺崎さんの話は親切で分かりやすいし、ちょっとカッコいいので、一緒に仕事ができるのは嬉しい。