アポイントメントの時間に会議室に行くと、すでに寺崎さんがいた。

「お疲れ様です。たびたびヒアリングに応じてくださってありがとうございます」
「いや、今日の件は営業企画のほうからお願いしないと…と思っていたところだから」
「そうだったんですか。実は私、先日、小谷専務から『マーケティング研修だ!』って言われただけで、ちょっとまだよく分かっていないというか…」

 マーケティング研修は小谷専務から降ってきたという状態で、よく分らないまま仕事を始めることになったから、少し不安がある。営業企画のほうから話したいことがあるといわれて、私はちょっと安心した。

「そういうことなら、まず僕から今までの経緯の話をしようか?」
「ぜひ、お願いします」

マーケティング力の強化が根底にあった

 寺崎さんの話は、営業企画部の業務についてから始まった。

 大手量販店や販売店に対する営業活動を行う営業部があり、それをサポートするためのキャンペーンと呼ばれる販売促進の企画やツールを作るというのが営業企画部の主な仕事らしい。その他には、営業部に対する商品知識の教育も行っている。新商品をリリースしたときには、商品の特徴を理解してもらうための勉強会を開いたりもするのだという。

 私は新人研修で会社の部門の仕事内容は教わっていたけれど、表面をなぞったくらいで理解できていたとはいいがたかった。実際に接点があると、色々な仕事が分担されて行われているということが見えてくる。営業企画部はマーケティングを行っている部署という印象があったけれど、多岐にわたるマーケティング活動のうち、プロモーションに重点をおいているということが分かった。

 営業企画部の業務についての話が終わると、続いて最近の営業業績に話が移る。

 日本全体の景気の悪さもあり、業績はあまり良くない。同業他社と比較してみれば決して悪い業績ではないが、上層部からしてみると不満一杯だったらしい。そこで小谷専務が後藤営業部長と青木営業企画部長を呼び出し、今年度の営業の建て直しについて検討会が行われたのだそうだ。

――こういう時代だからこそ、戦略的で積極的な攻めの営業を行わなければならない

 そういう方向で意見が一致した。そのための施策として、マーケティング力の強化という話がでたらしい。営業企画部では商品知識の教育は行ってきたが、営業スキルの研修となると勝手が分からないから、人材開発部に依頼しようということになったそうだ。